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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-2

 「写真って?」
 「だからあの写真」
 「あの写真? あっ、あの写真か」
 「うん、俺兄貴にもう1回見せてくれって言ったらもう返したって言うんだ」
 「そうかあ。それは残念だな」
 「うん、俺ももう1回見たかったのに」
 「そうだな。でも仕方無いな」
 「ああ。でもお前んち女ばっかりなんだろ?」
 「うん」
 「本物見る機会無いの?」
 「本物って姉さんの?」
 「母さんも妹もいるんだろ?」
 マサルは良介とは反対に母親が無く、兄と2人だけの兄弟なので家には全く女っ気が無いのだ。
 「いるけど本物なんて見たこと無いなあ。あんなの持ってるなんて考えたことも無かった」
 「なんで? お前姉さんにもチンポがあると思ってたの?」
 「まさか。でもチンポが無くて代わりに何があるのかなんて考えたことも無かった」
 「穴があるって知らなかったの?」
 「それは知ってたけどあの写真穴なんて無かったじゃないか」
 「穴があるからチンポが半分隠れてたんだろ」
 「そうか。それじゃ入れる前はポッカリ開いてんのか?」
 「そりゃそうだろ。お前、開いてなきゃ入らないじゃないか」
 「そうだな」
 「今度姉さんの見せて貰ったら?」
 「馬鹿。そんなこと言ったら殴られる」
 「お前の姉さん、そんな乱暴なの?」
 「乱暴だな。オートバイ乗り回してるから」
 「それじゃ妹は?」
 「妹にそんなこと言ったら泣き出すよ」
 「母さんは駄目だよな」
 「駄目だな」
 「そうかあ。大勢女がいても駄目かぁ」
 「駄目だな」
 「俺んちなんか男ばっかだから風呂入った後なんか皆裸でうろうろしてんだ。だからお前んちもそうじゃないかと思ったんだけど」
 「僕んちは男ばっかじゃないよ」
 「だから女ばっかだろ?」
 「そうだな」
 「風呂入った後裸でウロウロしてないの?」
 「無いな」
 「やっぱりお前が男だからかな?」
 「うーん、そうなんだろな」

 良介の家族は母親と姉と妹が1人ずつで父親は妹が生まれて直ぐ死んだから顔も覚えていない。姉の恵子と良介が父親似で整った顔立ちであり、妹の光子が母親似でまあ普通の顔である。しかし姉の恵子は男勝りで可愛くないが妹の光子は何でも良介の言うことを聞いて可愛い。
 マサルの父はまるで宮本武蔵みたいな顔をしている。宮本武蔵には会ったことが無いけれども多分こんな感じの怖い顔だったのだろうと思う。髪がボサボサに乱れていて四角い野性的な顔である。そんな顔なのにマサルの父は生け花の先生である。一葉流という自分で作り出した流派の生け花だが、良介が見るととても生け花には見えない。一度マサルに
 「これって生け花なのかあ? 現代彫刻なんじゃないの?」
 と聞いたことがある。マサルはそんな言葉には慣れていると思うがやはり多少侮辱されたように思うのか、厳しい顔をして
 「植物を材料に使っていれば生け花なんだ」
 と答えた。


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