投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

妙子2
【その他 官能小説】

妙子2の最初へ 妙子2 42 妙子2 44 妙子2の最後へ

妙子2-43

 「いらっしゃいませ。此処は初めてですか?」
 「ああ」
 「何お飲みになりますか?」
 「ブランデーの水割りをくれ」
 「ブランデーとウィスキーはボトルを入れて頂くことになるんですけど、宜しいでしょうか?」
 「うむ。それでいい」
 「何にしましょう?」
 「ヘネシーのVSOPにしてくれ」
 「はい」
 「氷を沢山くれ」
 「はい。お名前は何と仰るんでしょうか?」
 「研だ」
 「ケンさんですか?」
 「ああ」
 「他にもケンという方がいらっしゃるので、漢字を教えて下さいますか?」
 「研究の研だ」
 「はい」
 「哲は此処には良く来るのか?」
 「は?」
 「高木哲也だよ」
 「お友達でいらっしゃるんですか?」
 「ああ」
 「時々お見えになります」
 「ちょっと話があるんで呼んでくれないか?」
 「は?」
 「電話番号は知ってるんだろ?」
 「はい」
 「研と言えば来る」
 「はあ」

 「あんたから呼び出されたのは初めてだな。何事だ?」
 「頼みがあるんだ」
 「ほう」
 「もういい加減やめてくれないか?」
 「何を?」
 「惚けなくてもいい」
 「惚けてない。何のことか分からない」
 「久美のことだ」
 「久美というのはスターレットの久美のことか?」
 「そうだ」
 「それで久美のこととは?」
 「おい。惚けてんのか、それとも本当に心当たりは無いのか」
 「心当たりなんて何も無い」
 「本当か?」
 「久美に惚れたから久美に近づくなと俺に言いたいのか?」
 「まさか」
 「俺は久美の男でも何でもないんだぜ」
 「そうか? 話をする場所がまずかったかな」
 「こいつのことか? やっぱり知ってるんだな」
 「そうでなけりゃ、こんな所へ呼び出したりするもんか」
 「こいつのことなら構わんよ。大体久美なんて俺の好みじゃないんだ。こいつを見りゃ俺の女の好みは分かるだろ。あれはただのお客だよ」
 「そうか?」
 「ああ、ただのお客さ。それも俺が客なんじゃなくて、あっちが客なんだ」
 「あっちが客とは?」
 「小遣い稼ぎにあいつのトラブル処理をしてやってるのさ。あいつは阿漕なやり方してるんで、客とのトラブルが多いんだ」
 「ほう」
 「誰とでもすぐ結婚するような素振りをするのはいいんだが、貢がせるんだよ。弟がヤクザの車をこすって金を請求されているとか、お母さんが白血病で医療費が掛かるのとか、適当なこと言うんだ」
 「それじゃ結婚詐欺じゃないか」
 「そうなるんだろうな」
 「あんたも片棒担いでるんだろ」
 「担いでない。俺は久美がどうやって金をせびったのか、当の被害者から聞かされただけだ。分け前貰ってる訳じゃない。小銭を貰ってしつこくつきまとう男を追い払うというだけさ」
 「しかしそれなら、あんたがやる程の仕事でもないだろう」
 「あいつは下っ端を相手にするのが嫌いなんだ。良くいるだろ? そういうの。何かって言うと責任者を呼べって言う奴。自分は偉いから偉い奴しか相手に出来ないと思ってる。あいつはそれの女版さ」
 「それなら何で店に飲みに行くんだ」
 「店に行くのは飲みに行く訳じゃない。『ほら、あそこに座ってる青いセーターの男がいるでしょ? あれが今言ったしつこい男』って具合にターゲットを教えて貰う為に行くんだ。勿論飲み代はあいつが払うのさ」
 「なるほど」


妙子2の最初へ 妙子2 42 妙子2 44 妙子2の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前