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クッキーの行方
【その他 官能小説】

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クッキーの行方-7

(7)

 日常の生活は誰しも同じようなことを繰り返して過ごしている。時に変わったことがあっても、それらの多くは過ぎてみれば些細な出来事。周囲の人たちの一頃の話題になり、やがていつもの毎日に戻っていく。

 何事もなければ退屈なのかというと、そうでもない。家族や友人、同僚たちと他愛無い事を語らい、それらはほとんどが意識しない事々で、何を話したかさえ憶えていないことばかりである。だが、それが日常であり、人の生活の大半を占めているものなのだと思う。

 退屈ではないが、いつもと違う空を眺めてみた。知らない道を歩いてみたい。そう思うこともある。
 東京に帰ってから、西村はまゆみを心に抱いて過ごしていた。それはとても温かな面影だった。


 秋保温泉への旅。……思惑とは外れた激しさの沈んだ一夜になった。その分、深い感慨を味わったというべきかもしれないが……。

 雪景色の中を進むバスの車内。西村は大人の顔を装いながら自身を持て余していた。
ネットで調べて予約した和風旅館は離れの部屋。
(まゆみと過ごす2人きりの世界……)
 想像しただけで息が乱れるほどだった。ATMで金をおろした。宿泊代とまゆみに渡す金である。デリヘルはやめたと言っていた。だから『サービス』を求めるつもりはなかった。
(体がほしい……)
1泊を承知で来るのだ。わかっているはずだ。謝礼として5万用意した。デリヘルで稼ぐなら数人の客をこなさなければならないだろう。悪い条件ではない。バッグにはコンドームも忍ばせてあった。準備万端で臨んだのだから秘めた昂奮も相当なものであった。

「私、今日、体調が悪くて……」
通された部屋でお茶を淹れながらまゆみが言い、なぜか窓越しに視線を向けた。雪が降っている。広がった日本庭園は水墨画のように見える。
「風邪でもひいたの?」
まゆみはかぶりを振り、やや目を伏せた。
「女性の、あれです……」
「……」
西村は黙って頷いた。

「すいません……」
「何も、謝ることないよ」
「だって……」
まゆみは彼の意図をわかっていたし、誘いがあった時点で意味を理解していただろう。

(そうか、無理か……)
不思議だったのは心にほとんど『波紋』が起こらなかったことである。たしかに落胆はあった。だが、昨夜からの意気込みの強さを考えると意外なほど落ち着きがあった。
 まゆみが力なく謝ったことが彼の胸に沁みた。身を任せるつもりが意に添えなかった。その気持ちが表情に表われていて、心根が伝わった。そう思った。しかし、
(なぜ、体を許そうと思ったのだろう……こんな冴えない中年男に……)

「1日目は、ちょっと大変なんです」
内風呂があるのだが、一緒には入れないと言った。
「体は、きついの?」
「いえ、特にふだんと変わらないんですけど、憂鬱で……。変な話してごめんなさい」

(なぜ、付き合ってくれたの?)
訊こうと言いかけたが、言葉を伏せた。
(ここに来てくれた)
それでいい。十分ではないか。
 まゆみのことはほとんど知らない。
(彼女は俺のことをもっと知らない……)
出張で東京から来た会社員、西村……。その2人が温泉宿にいる。それだけでドラマのような稀有な展開……。あえて理由は訊く必要はないように思った。

 乾杯をして、
「何に乾杯?」
「西村さんに」
「まゆみちゃんに」
「なんだかわからないけど」
笑って、とりとめのない話をして、楽しい食事のひと時だった。現実でありながら、空想の空間かもしれないと、それは温もりをもった心の浮遊であった。

 食事が片付けられて、テーブルには冷えた白ワインとグラスがセットされた。西村が設定したのである。
「いい雰囲気ですね」
庭の雪が部屋の灯りを受けて青白く見える。

「やめたってことは、次の仕事は見つけたの?」
「まだ、未定です」
まゆみは彼のグラスにワインを注ぎ、
「区切りっていうか、だらだら続けても切りがないし……」
あの仕事はあくまでもお金のため、割り切って入った世界だった。
「何をするにしてもお金がないと動けない。会社だって運転資金が必要でしょう?」
ある程度貯まったので決心した。
「特別な理由はないんです。もうそろそろって考えていたっていうことで……」
 この旅館は中心街からやや離れている。さらに別棟ということもあって静けさに包まれているような夜であった。
 
 時間が止まったような静寂が呼吸をしていた。
内湯を使った浴衣姿のまゆみが西村の布団をそっと剥いだのは深夜のことである。
「そんなこと、いいよ。もう仕事やめたんだから」
「仕事じゃありません。素敵なところに連れてきてもらったお礼……」

 下着を下げられ、露になった下半身にまゆみの掌が触れるとうずくまっていた一物が頭をもたげてきた。
 口に含まれ、怒張した。形を確かめるように舌が回っていく。心なしか、優しさを感じる動きに感じた。

 彼女の体調を聞いて、そのつもりはなかったのだが、沈めていた欲が吸い上げられて体がいうことをきかない。
「うう……」
まゆみの顔が回転する。同時に、握った手が扱きを加えてくる。やがて上下、そしてまた回転。
(ああ……)
兆しを察知したのか、タイミングを合わせるように手と口の動きが加速した。まゆみの鼻息が聴こえた。

「ああ、いく……」
体が突っ張って、反った。
まゆみの口は咥えたまま、手は液を絞り出すように幹を引き上げる。何度も、何度も……。
(飲んでいる)
彼女の喉が鳴ったのである。


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