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Time Capsule
【初恋 恋愛小説】

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White chocolate valentine-3

夜20時に帰宅した俊輔。部屋に入るとまだよちよち歩きの彩音が手に何かを持って歩いて来た。俊輔が彩音を抱き上げると手に持っていたものをニコニコしながら差し出して来た。
「ん?なぁに??」
明らかにバレンタインのチョコレートだ。亜里沙が彩音を通して渡して来てるのかと思った。
「ママから??」
そう言って受け取ると夕飯の支度をしていた亜里沙が言った。
「保育園で作ったんだって。彩音の初めてのバレンタインチョコだね♪」
「え?そうなの??凄いなぁ、彩音、チョコレート作ったんだ♪」
そう言って彩音の頭を撫でると嬉しそうな仕草を見せた彩音。子供から貰う人生初のバレンタインのチョコレートはまた違う喜びを感じさせてくれた。
「じゃあ早速食べようかな♪」
彩音を抱えたままソファーに座り彩音を隣に座らせ包装を外す。そして箱を開け中身を見ると、俊輔は一瞬動きが止まった。
「え…」
目を疑った。なぜならそのチョコレートに見覚えがあったからだ。

(これ…、20年前に友美がくれたのと同じじゃないか…)
そう、まるでタイムカプセルを開けたかのような気持ちになった。ハート型の手作りであろうチョコレートだ。まさに友美に貰い、食べるのが勿体なくずっとしまっておいたものと全く同じであった。思わず固まってしまった俊輔に亜里沙が言った。

「先生と一緒に作ったんだって。彩音は友美先生と一緒に作ったって言ってたかな。」
ドキッとした。彩音からでもあり、また友美からでもあるバレンタインのチョコレート。少し胸が熱くなってしまう。
(しまっておいて実は食べてないって言ったから、友美…、わざわざ作ってくれたのか…?)
昨日20年前のを食べると言った時に制止された事を思い出す。それを覚えていてくれたのだろう。もしくは食べなかった事が悔しくて意地でも食べさせようと思ったか…、まぁ恐らく前者であろうが俊輔にとってはこれ以上ないサプライズであった。

20年前とは違う。今なら素直にすぐ食べられる。俊輔はゆっくりと手を伸ばしハート型のチョコレートを手に取り口の中に運んだ。
「美味い…、美味いよ彩音…」
何故だろう、目に涙が浮かんだ。あの時友美からのチョコレートを食べたのならば、きっと違う人生が待っていたのかも知れない。しかし今、娘からの初めてのバレンタインのチョコレートに感動し、涙を浮かべている自分がいる。その2つの想いが詰まったチョコレートは甘く、しかし少し苦味のある、そんな味がしたような気がした。

20年の時を超え、友美から届けられたバレンタインのチョコレートを俊輔は一生忘れられそうもなかった。


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