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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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信頼-5

「すみません、態々送って頂いて。」
「ううん!君は僕にとっても大事な人な訳だし、君のような人をこんな寒くて暗い道を歩かす訳にはいかないよ。」

大事な、人…。

好きな人が自分をそんな風に思ってくれる何て。ただでさえ送ってくれるだけでも嬉しいと言うのにこのような事まで言ってくれるとは。

この時の私はそれが自分にとって実に都合の良いようにその言葉を捉えていた。恐らくもう会えないと諦めていた好きな人と再び会えた幸福に舞い上がっていたのだろう。

ふと周りを見ると暗い街中にぽぅと薄っすらと光を灯す自販機が。すると彼が財布を取り出し缶コーヒーを買う。

何だかいいなぁーこの感じ。

そう幸せを感じ、彼をじっと見つめていると。

「え…。」
「はい、君も良かったら。」

ぼーとする私に彼は缶コーヒーを差し出した、自分の分とそして私の分と。

「あー。」

予想外の出来事に口が開いたままに。

「コーヒー…ダメだった?」

少し困り果てたように首を傾げる彼。

「えっ!あーいや全然!有難う御座います!嬉しいです!」

我に返り、彼の好意に答え、受け取る。

「良かった、ふふ♪」

無邪気に笑う彼。

何とも言えない幸せ、ついさっきまで疲れて暗くて寒くてだるい道中となると覚悟していた筈が、こんな。

彼の少しやつれたけど明日も頑張ろうとする横顔を見る。

私は今日一体どれだけ彼から大切なものを貰ったのだろうか。

それから彼との会話はそれほどなかったものの肩を並べれただけでとっても幸せで、最早寒い事や暗くて怖い事なんて忘れていて。

「あ…。」

けど、楽しい時間と言うのはアッと言う間に過ぎてしまう、気が付くとそこは彼と初めて出会い私に傘を入れてくれたあの場所につき。

「じゃ後は大丈夫だね。」
「…すみません、私の為に態々無駄な距離を。」
「平気平気!僕も道一緒だから。」
「嘘はやめましょう、もうその手は通用しませんよ?」

彼の優しい嘘に二度は騙されない。私はつい楽し気に悪戯っぽい顔と口調でそう言ってみせた。

「…あはは、バレたか。」
「ふふ、でも有難う御座います。」

その気持ちだけで充分です…、私は貴方のそういう所が好きなんですから。

最初は彼の言った通り家が近いのかなぁーって思ったけど、違った、後になって柊先輩から何気ない話からその情報を仕入れて。

柊、先輩。

今の私の浮かれあがった気持ちに彼女の存在が異様に邪魔に見えて来た。可笑しいな彼女だって私にとっては大事な存在な筈なのに。

その気持ちがのちにつけあがる私への警告音である事を思い知らされる。



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