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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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信頼-3

「風馬君って……あの小鳥遊先輩がっ!」
「…うん、実はね彼もここでずっと前から働いているの、母子家庭だからって少しでも母親の負担を減らそうとって、本当それ聞いた時涙出ちゃったわ。」

上機嫌にその時の事を思い返し興奮する彼女。

私にこのパン屋さんを紹介したのはこの為だった訳か。

…会える、あの小鳥遊先輩に会える!

あの日、彼女から彼を紹介された時、こりゃもう駄目だ、大好きな彼に諦めず言い寄る何て出来っこない、そう思って私の中では彼の存在を引き出しの奥底に締まっておいたのに

眠りにつき、埃で被っていた想い出が再び起きたようで。

嬉しい!また彼に会える何て、まさか柊先輩までここで働いてる訳もないから、この店では私と彼の二人きり。

右も左も分からない私に優しい彼に手取り足取り教えて貰おう!

そう考えると自分でも驚くくらいに一気にテンションが急上昇し。

「先輩っ!」
「っ!」

イスをガタッとさせ、勢いよく立ち上がり、紹介してくれた先輩の両手をぎゅっ!と感激の意味を込め握りしめる。

「有難うございます!私、頑張りますね!」
「ちょっとちょっと、まだ電話も履歴書すら書いてないでしょ!」
「あ…。」

……しかし、何だか妙な気持ちだ。もちろん大好きな彼にまた会えるのはとても嬉しい…けど、どこかモヤモヤする。

この時の私は浮かれあがっていた。

この一見願ってもない幸福が、実は。

私の心をベンチか何かで抓るくらいに実に痛ましい出来事の前触れである事に。



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