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Time Capsule
【初恋 恋愛小説】

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第5章 20年越しのキモチ-7

俊輔が持っているボールペンに視線を移す友美。今でも真剣に時間をかけてこのボールペンを選んだ時の気持ちは忘れていない。このボールペンをプレゼントしたら俊輔は喜んでくれるだろうか…、自分ではなく恭子からプレゼントされた方が喜ぶのかな…、迷惑かな…、そんな気持ちを抱えながら選んだボールペン。同時にそのボールペンを俊輔が岩波にあげてしまった時の悲しみも思い出す。

「俺、本当は友美からもらったこのボールペン、一回も使ってなかったし、ずっと大切に家にしまっておいたんだよ。」
「えっ…?だって学校で使ってたの、見たよ…?」
プレゼントしてから岩波にあげてしまうまでに友美は確かに俊輔がそのボールペンを使っている所を見たし、嬉しかった事を覚えている。俊輔は1度ゆっくりと息を吸い、大きく吐いてからその理由を口にする。

「俺、女に誕生日プレゼント貰ったの初めてで凄く嬉しくてさ。使うのがもったいなくて思って悩んだんだよ。使わずしまっておきたい、でも使った方が友美は喜ぶだろう…どうしようって。そこで思ったんだ。このボールペンを売ってた所は知ってる。だから自分でもう1本買って、それを学校で使おうって。だからあのデパートに行って同じのをもう1本買ってきて、それを学校で使ってたんだ。」
「じ、じゃあ…」
「うん。岩波にあげたのは自分で買って来たやつだったんだよ。友美に貰ったのはしっかりと家にある、自分で買った奴ならいっかって軽く考えてた。俺が馬鹿だったのはそれを友美に言わなかった事。そりゃあ友美は自分がプレゼントしたボールペンをポンってあげちゃったって思っても仕方ないよ。俺の方こそ言葉が足りなかったんだ。ちゃんと言えてれば友美が怒る事もなかった。本当にごめん。」
頭を下げる俊輔に、20年間思い込んでいた事と違う事実を知らされ友美の頭の中は少し混乱した。

「でも今となってはさ、コレが友美から貰ったものだと証明できるもんが何もない。もしかして友美から貰ったのを岩波にあげちゃってヤバいと思って後から買いに行ったものかも知れないし、言い訳にしかならないよね…。」
ゆっくりと肩を落とす俊輔に友美は言った。
「見せて…?」
と。差し出された手に俊輔はボールペンを渡した。掌の上に置かれたボールペンをじっと見つめる友美。そして1度ギュッと握りしめて目を閉じ微笑みを浮かべたのであった。


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