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【SM 官能小説】

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宴 〜契約〜-7

「そういえばそんな事もあったな……じゃあ、まだ時間はあるな?」
胤真は手招きをし、智佳を膝の上へ座らせる。
「仕事仕事と追いまくられて、しばらくお預けを食ってたんだ。ご馳走してくれたって、罰は当たらないだろ?」
胤真は、智佳のスーツの下へ指を這い込ませる。
「馬鹿……」
声に甘さが混じるのは、胤真のお預け期間中は智佳自身もお預けを食ってきたせいに外ならない。
「あっ……駄目……」
だが、智佳は胤真を拒んだ。
「先に、会長に会わないと……」
「秘書なんか始めたらおカタいねぇ、お前は」


二人が仕事を終えて草薙本家へ帰り、準備を整えて徳之進の元へ行くと、ぎょっとする事態が待ち構えていた。
正確には、胤真だけが驚いたのだが。
徳之進の部屋には胤真の両親と、分家の家長全員が集まっていた。
特に、下から数えた方が早いくらいに家の格が低い智佳の両親が上座にいるのは違和感を覚えさせる。
それが、親戚ばかり集まったこの場に妙な緊張感をもたらしていた。
何やらとてつもない事がこれから起こるという事だけは分かるが、それが何かは皆目見当がつかない。
「おお、来たか。さ、座りなさい」
徳之進が、自らの傍らを指し示す。
二人分の席が、そこに空けられていた。
二人がその席に落ち着くと、徳之進が柏手を打つ。
すると次の間から、ご馳走が運ばれて来た。
何食わぬ顔を装いながら、胤真はますます混乱する。
「二人を待ちくたびれて、わしは腹が減ったのでな。先に腹拵えをしてからにしよう」
ご馳走が配膳され終わると、徳之進はそう言った。
家長達はてんでんばらばらに、ご馳走へ箸をつけ始める。
「はい、胤真」
その様子を眺めていた胤真は、智佳の声で我に返った。
「あ、ああ……サンキュ」
小さなグラスにキリリと冷えた日本酒を注いでもらい、胤真はそれをぐっと飲み干す。
「飲むだろ?」
智佳の手から日本酒の瓶を取り、胤真はそう尋ねた。
だが、智佳は首を横に振る。
「ううん、しばらくは控えるわ」
「?」
―目の前のご馳走があらかたなくなり、全員の腹がくちくなる頃、徳之進は再び柏手を打った。
すると次の間から使用人達が現れ、食器を素早く綺麗に片付ける。
再び親戚一同のみが部屋にいる状態へ戻ってから少しして、徳之進が口を開いた。
「さて、今日はめでたい報せがある」
一同に、緊張が走る。
「わざわざ集まってもらったのは他でもない、その報せを皆へ公平に教えるためじゃ」
徳之進は、胤真と智佳を一瞥した。
「本家出身の胤真と分家出身の智佳が恋愛関係にある事は、知っておる者も感づいておる者もおろう」
室内が、ざわつく。
「つい先日、わしは智佳の口から直接報告を受けた。智佳は、草薙本家の後継ぎを腹に宿した」
ざわめきは、どよめきに変わった。
寝耳に水の話に、胤真はポカンとして智佳の顔を見る。
「そこでじゃ。わしは、二人の婚約及び婚姻を認める。異義のある者はこの場で挙手し、述べてみよ」
一番に反対意見を述べるはずの草薙家のトップが真っ先に賛同しているこの状況で反対できる者など、いる訳がなかった。
「胤真。異義はないな?」
そう言われて、胤真は我を取り戻す。
「妊娠……したのか」
智佳の方を振り向き、胤真は尋ねた。
「うん……」
「……」
考えてみれば安全日にはどばどばと中出ししてきたが、智佳の胎内で数日生き延びた特別しぶとい奴が、邂逅を遂げたとしても不思議ではない。
「……怒ってる?」
胤真はこくりとうなずいた。
「当たり前だろう」
「ごめ……」
謝りかけた智佳の口を、胤真は塞いだ。
「何で父親の俺より先に爺さんへ報告するんだ?」
「あ……」
智佳の目が潤む。
「だって……胤真がどういう反応するか、分からなかったんだもの……」
人目も憚らず、智佳は胤真へ抱き着いた。
「ふむ、めでたい事じゃ。一年後には孫の顔が拝める事じゃし、まだまだ死んでなぞおれんわい!」
かっかっかっ、と徳之進は笑った。


(了)


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