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勃ち上がれ! My Prince Patient
【女性向け 官能小説】

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魔獣よ、目覚めなさい-1

 私は頭を掻きむしった。
 「あー、なんか脳にひっかかったんだけどなあ。閃きそうで出てこない。」
 「どんな感じの事?」
 「それが分からないのよ。うーん。」
 清志くんは心配そうに私の顔を覗きこんできた。
 「…ねえ、どうして三年も放置してたのに急に受診しようと思ったの?」
 「ああ、それはね。今年の春、蘭火が僕と同じ美大に入学してきたからさ。今度こそちゃんと抱かなきゃと思って。」
 「…なぜ抱きたいの?」
 「なぜって…彼女をとても大切に思っているのに三年前は望みを叶えてあげることが出来なかったから。守るって約束したから。」
 「…清志くん自身は彼女を抱きたいの?好きなの?そういう関係になりたいの?」
 「落ち着いてよ。」
 「そうじゃないの。何かが見えてきた。答えて。抱きたいの?蘭火さんを。」
 「え…それは…。」
 「さっき私に言ったでしょ、義務感でしようとするから、って。それを清志くんと蘭火さんに当てはめれば?」
 「あ…。」
 「ね!」
 「そうか。」
 「そうよ!」
 二人は頷き合った。
 「僕は友人として蘭火を慰めたいと思った。」
 「でも、男として彼女に欲情を感じたわけではない。」
 「なのに僕は…義務感で蘭火を抱こうとした。だから。」
 「勃たなかった!」
 「勃たなかった!」
 原因は分かった。
 「まとめるね。」

 1.蘭火に慰めを求められ応じようとしたが、そういう対象に見ていないのに義務感で抱こうとしたので勃たなかった。
 2.そのことを激しく責められ、フォトフレームをぶつけられたことに強いショックを受けた。
 3.その出来事がブレーキを踏み、他の女でも勃たなくなった。

 「どう?」
 清志くんの顔に晴れやかな笑顔が広がっていった。
 「ああ、なんだか気持ちが…今まで重みを感じていた気持ちが、フワっとなった気がするよ。」
 私は大きく頷いた。
 ナゾは解けた。でも、同時に分かったことがある。
 「ね、」
 「なに?」
 「見て。」
 私は診察用ベッドの上で両膝を抱え、少し開いた。
 「ちょっ、ちょっと!?何してるんだよ、どうしてまたそこを…」
 「いいから見て。」
 清志くんは片膝立ちになり、私の太腿の間を覗きこんできた。
 「あ…濡れてる。」
 「そう、ビショビショ。しかもプックリ膨らんじゃってる。この意味分かる?」
 「え…それはまあ…。」
 「抱かれたいの、あなたに。医者としての義務じゃなく、女として。」
 「うん…。」
 「妹だ、と誤魔化したんじゃないと分かった。蘭火さんとの関係も理解した。清志くんがあのあと何度も誤解を解こうと連絡してくれたんだということも。だから、私を必要としてくれているのを今、確信している。」
 「そうだよ、僕は諒子さんを必要としている。」
 「わだかまりの無くなった私の素直な気持ちが、この通り体の変化として表れている。」
 「うん。すごく嬉し」
 「でも。」
 「え?」
 「でもあなたは私を女として欲しているわけではない。蘭火さん同様に。」
 彼の股間を見つめた。
 「え、だってそれが理由で受診したわけだし。そんなに急に…。」
 ふう、と一つため息をついた。
 「私がこれまで学んできた医学知識と経験から言って、原因がはっきり分かればその時点で治療は終わったも同然なの。いきなりフルパワーはさすがに無理だろうけど、多少の反応は必ずある。医者として保証するわ、あなたのEDは治った。」
 「待ってよ。抱くことは出来ないと分かったけど、蘭火への責任が無くなったわけじゃない。彼女が望んでいるのを知っていて、それを別の人にだなんて。諒子さんとだけそういう関係にはなれないよ。だから…」
 バンッ。
 私は両手でベッドを思いっきり叩いた。
 清志くんはマンガの様に以下略。
 「まだ言ってるの?望むことをしてあげるのが責任を果たすという事じゃない!あなたはあなたの心で、気持ちで、愛情で、蘭火さんを愛すればいいのよ。他に出来る事なんて無い。」
 「それは…。」
 「さあ、私はあなたに気持ちを開いた。全開。ここも全開。清志くんの私に対する心は、気持ちは、愛情はどういうものなの?友人だ、というならそれでよし。医者と患者だ、だったら辛いけど受け入れる。」
 清志くんは決意を込めた顔で私と目を合わせた。
 「諒子さんと結ばれたい。僕は。他の誰でもなく。」
 「…その言葉が本当だと言うのなら。」
 ダン。
 私はベッドから降りて床を踏みしめた。
 「勃ちなさい!清志!」
 …。
 「勃ちなさいってば…。勃ってよ…。」
 私は数歩よろめいた所で崩れ落ちるように床にしゃがみ、お尻を着けて膝を抱えた。床がとても冷たく感じた。
 「勃ってくれないの?そっか、そうだよね。子供の君に酷いことをして怖がらせた相手だもんね。しかもずいぶん年上で、嫉妬深くて、勝手に誤解して話も聞かずに冷たくして…。」
 抱えた膝に顔をうずめ、目を閉じた。涙が太腿に数滴落ちた。
 「諒子さん…。」
 「…。」
 「目を開いて。」
 私はイヤイヤをするように首を振った。
 「さあ、開いて。」
 首を振った。
 「目を開け!諒子!」
 え…。
 私は思わず顔を上げた。
 「ウソ…。」
 「これが僕の気持ちだ。僕の諒子への愛情だ。」
 なんということだ。
 「ほら、やっぱり勃たないじゃない。」


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