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『プラスチックリング』
【悲恋 恋愛小説】

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『プラスチックリング』-2

早く明日になってほしい……

確かに言葉通りの意味だけど、理由は全く違うのよ?明日になれば結婚する。つまり、人妻になる……

今のあたしはその足枷を望んでいるの。自分を縛り付ける為の足枷を……

そして、あたしはこの街を離れる。いいえ、あたし自身が離れる事を望んでいる。心の片隅に残る未練を断ち切る為に……




『お前、アイツのコトをどう思う?』


その日彼は突然、そんな台詞を口にした。アイツとは彼の親友のコトだ。


『いい人だと思うよ。』


その台詞の意味がわからずあたしが好意的な答えを返すと、彼はホッとしたような表情を見せる。だけど、その後に続く言葉を知ってたら、決してそんな答えは言わなかっただろう。


『そっか……アイツ、お前のコトが好きらしいんだ。いい奴なのは俺も保証するし、よかったら付き合ってみないか?』


目の前が真っ暗になった。まさか、彼の口からそんな言葉が出るなんて思いもしなかったから……

あの縁日での約束なんて、忘れてしまったの?

あたしは忘れたコトなんてなかったのに……

ずっと誓いを守ってきたのよ?

叶わないコトと知っていても、大切な想い出だったのにあなたは忘れてしまったの?


そして彼の望み通りにあたしはあの人と付き合い始めた。事実、彼が言う様にあの人はあたしを大切にしてくれる。だけどそれはあたしが望む未来ではなかった。

あの人に身を委ね、彼を忘れるコトに日々は費やされていく。そしてある日、あたしはあの人からプロポーズされたコトを彼に告げた。


『そうか!おめでとう、俺も嬉しいよ。幸せになるんだぜ。』


違うの!!

あたしはそんな言葉が聞きたい訳じゃない!

どうして笑ってるの?

なんで『行くなよ』って言ってくれないの?

もう彼の中にあの日のあたしはいないんだ……

突き付けられる現実が、最後の想い出を粉々に砕いた。だからあたしはあの人のプロポーズを受けてこの街を離れる事にしたの。これ以上彼の顔を見るのが辛かったから……


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