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【SM 官能小説】

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宴 〜忌憶〜-4

4 集会への参加はともかくとして、過去に胤真が複数の女性と同時に付き合っていた事は、智佳も知っている。
驚くべきポイントはいくつかあるが……一番感心するのは、八人と同時に付き合い、八人がいずれもお互いの顔を知りながら、いさかいが全く起こらなかった事だろう。
今より体力も性技も劣る胤真が彼女らに傾ける情熱を八人分に薄めて注いでいたのにいさかいが起こらなかったのは、一人一人が満腹になり、いちいち嫉妬する気が失せるまで相手をしていた事に原因がある。
一度交われば後は何もしなくても二週間はお腹いっぱいになっているような濃密な時間を、胤真は彼女達に与え続けていた。
経験豊富な彼女達はそれぞれが胤真に性技を教え込むための割り切った関係に納得し、互いを貪り続けたのである。
そうして胤真は、年に似合わない性技をマスターした。
そんな体力も性技も昔とは比べものにならない胤真から、智佳は八人分に薄めてもなお満足されていた情熱を一身に浴びているのである。
智佳が、もっと早い時期に堕ちない方がおかしかった。
その八人同時飼育は主催者に知られているし、以来、この集会での胤真は主催者のお気に入りである。
今夜も主催者は胤真を見付け、笑顔で近付いて来た。
「お久しぶりね、草薙君」
年の頃は二十代後半から三十代前半。
身長百七十前後のすらりとしたスタイルに、Fより下という事はないどぉんと迫り出した両の乳房。
濡れたような艶めきを放つ紅い唇が印象的な、美女だった。
「お久しぶりです、葛城さん」
胤真が、敬語で挨拶する。
「新しい男の子……ですね?」
胤真は女性―葛城響子の脇に四つん這いで犬のように侍る、既に調教に入っている者を見た。
ギャグを噛まされ、黒いレザーの目隠しをされているので、顔は分からない。
小さい乳首にはピアスが通され、その間には細いチェーンがかけられている。
そして、首には大型犬用の首輪とリード。
「ふふ、そうよ。まだ十代の、可愛い男の子」
少年が高く掲げた尻からは、極太のバイブが生えていた。
「……なかなか素敵な趣味をしていらっしゃる」
「そう?」
葛城響子は、少年の無防備な脇腹をハイヒールで踏み付ける。
『……!』
少年の息遣いが、智佳にはむふむふと興奮している風に聞こえた。
「あ、そうそう」
胤真は手振りで、瓜生兄妹を指し示した。
「こちらは初参加の、瓜生芳樹君と瓜生真矢さん。実の兄妹ですが、この間婚約したカップルです」
近親相姦者と聞かされても、響子は動じない。
むしろ、『婚約』の二文字に反応した。
「まあ、婚約者なの。おめでたいわ」
響子は婉然と微笑む。
「それで、式はいつ挙げる気なの?」
「いや、そういうのは……」
できない、と芳樹は言いかけた。
「何も結婚式場を借りて盛大にやれとは言わないわ。でも、事情を知る人達を招いて『真似事』をするだけでもいいじゃない?」
先にそう言われて、芳樹は返答に詰まる。
「特に女の子は……ねえ?」
響子は、真矢の方へ視線を走らせた。
ウエディングドレスも白無垢も、兄である自分が相手では真矢に着せてやる事はできない。
だが、真矢が望むのなら……。
「真矢……そういうのでも、いいのか?」
真矢はきょとんっ、とした目付きをし……ついで、頬を赤く染める。
「う……うん!」
人目を憚らずにぎゅうっと芳樹に抱き着いた辺りから、その喜び具合が伺えた。
響子は目を細めて仲睦まじいその光景に見入っていたが、しばらくして視線を移す。
「で、こっちが……草薙智佳さんね?」
響子の視線を受け、智佳は胤真の腕に自分の腕を絡めた。
「と、智佳?」
意外な態度に、胤真は驚く。
智佳は胤真へ寄り添い、腕を体の前に持って来る。
つまり、胤真の後ろへ隠れたのである。
智佳は普段、人見知りするタイプではない。
なのに今は、突然そうなってしまったかのように胤真の背後へ隠れている。
思わず、響子を除く三人で顔を見合わせていた。
「智佳?」
胤真は智佳の頭より上に顔があるので、智佳がうつむきがちな顔で落ち着かなげに響子と少年を見ている事が、分からない。
芳樹と真矢も、胤真の背中に智佳が隠れているので、顔を見る事ができない。
「智佳。こちらは、葛城響子さん。パーティーの主催者で、ためらう事も萎縮する必要もない。安心して良いんだよ」
胤真は諭すが、智佳はますます胤真の背中に引っ付いてしまう。
「あらあら……嫌われちゃったみたいね」
気を悪くした風でもなく、響子はそう言った。
「それじゃあ、ますます嫌われないうちに失礼するわね」
少年を従えて、響子は姿を消した。


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