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変容
【SM 官能小説】

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変容-8

「ふたりにとって迷宮入りとなった性愛の未知の関係か……きみの小説みたいだな」
そう言った私の前で、彼は煙草をくわえ、薄い紫煙を静かに吐いた。

サタミは薄い嘲笑を口元に浮かべ、棘のある言葉を私に吐いた。「きみにはわかっているはず
だ。きみ自身の快楽の意味をね。そして、おれという男に快楽を強いられることの意味を…」

彼は煙草をくわえたまま眉根を寄せ、窓の外を凝視した。何かが私の中のものをじわじわと
突き上げてくる。


そのときふたたび部屋にあらわれた老人は、白いクロスのかかった私たちのテーブルに鈍色の
鍵を置いてサタミに言った。  

…地下室の鍵でございます。必要なものはすべてご準備させていただいています、いつでもご
使用は可能でございますよ。それにサタミ様がお持ちいただいたご愛用の鞭は、すでに地下室
に方に運んでおります。と言いながら老人は私の顔を盗み見るように視線を忍ばせた。

とてもお綺麗なご婦人様でございますね、それに驚いたことに《あの絵》の中の女性によく似
ていらっしゃる……老人は私の首筋から胸のふくらみを卑猥になぞるように視線を這わせ、目
元に深い皺を寄せた。私は《あの絵の中》の女性という言葉が理解できなかったが、サタミは
微かに頷くように頬を歪ませ、薄い笑いを浮かべた。

しばらく茫然として私を見つめていた老人は、ふと我に返ったように、わたくしはここの片付
けが終わったら離れの部屋に戻りますので、何か御用がありましたらご連絡いただければと思
います、どうか素敵な夜をお過ごしになってくださいと言い、私たちを残して部屋を出ていっ
た。
 


大きなダブルベッドのある寝室は、あくまで私たちの《関係の始まり》の場所にすぎなかった。
サタミの指が頬に触れた。息が一瞬、苦しくなる。彼が私に触れただけで、彼の支配を感じた。
彼は私にとって《そういう男》だということをあらためて感じる。

唇がふさがれる。私はその瞬間に彼の唇のすべての記憶を甦らせていた。体温も、匂いも、湿
り気も……そして、彼が私にいだいた欲望の何もかも……。

粘りつくような掌が私の背中に伸び、肩甲骨から腰のくびれを這い、尻を撫で上げる。強く抱
きしめられ、私の乳房が彼の堅くたくましい胸郭に押しつぶされそうになる。

肩が小刻みな呼吸をはじめる。彼の唇が烈しく私をついばむ。彼が私の唇から洩れる微かな喘
ぎ声を吸い取り、洩れる息を嗅ぐ。彼に支配されたいという欲望が、ぎしぎしと咽喉の奥で軋
む。


彼の巧緻で硬質な手が私のからだから丁寧に服を脱がした。彼の手はまるで熟れすぎて脆くな
った果実の皮を残酷に毟るように私を辱めながら、時間をかけて私を裸にした。

忘れかけていた自分の裸がそこにあった。彼の前で私は自分の肉体を意識した。いや、彼の前
だからこそ意識することができた。彼のまどろむような匂いの混ざった空気が皮膚に滲み入っ
ていくのを感じたとき、私は彼の視線に裸を晒す羞恥心に肌を微かに火照らした。

彼は私を軽々と抱えあげた。彼のたくましい腕の中から私の細い腕と脚がしだれ柳のようにこ
ぼれた。そして彼は私をベッドに放りだした。彼の優雅な頬に強ばった淫蕩さが漂ったとき、
私はなぜか彼に安心した。彼の《危険さ》が私をそう思わせたのだ。



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