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変容
【SM 官能小説】

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変容-7

彼はサディストだった……いや、あの頃の私にとって、彼はサディストでなければならなかっ
た。そして私はサディストの彼を精神的に、そして、《きわめて性的なよりどころ》として必
要としていた。

彼は、男たちに対して鞭を握っていた私の手首を、跪いた男たちが舐めまわした私の足首を、
男たちの欲望に歪んだ顔面に跨った私の股間を、厚い掌で荒々しく、侮蔑的につかみ、皮膚に
喰い込むくらい鋭い指爪を立て、支配した。私はその場で彼の存在がもつ意味の重みを知らさ
れた。

私がもっとも《私らしくなる》ように卑猥に拘束した無防備な姿勢は、私を覆っていた仮面と
皮膚と、そして、私自身を隠そうとする、私のどんな部分も無残にもぎとられた。

奪われる唇、剥がれる下着、削がれる肌、毟られる体液、炙られる陰毛…恥辱に晒され、虐げ
られる精神と肉体…彼が私に行うことの何もかもが冷酷で支配的だった。

彼は色彩のない私のオルガスム(彼は私の中のオルガスムの不在そのものを欲望の対象として
いたのだが)に鮮やかな光をもたらすのに必要な男だった。彼の容赦ない仕打ちで麻痺的な苦
痛の覚醒状態におかれた私は、彼の股間にある、堅く、長く、太く、熱いものでからだの中心
を刺し抜かれ、子宮を砕かれた。私は何度となく彼が与える苦痛を哀願し、彼に溺れ、けっし
て他の男性から得られなかった《純度の高いオルガスム》を迎えることができた。

私は彼を愛していたのだ……愛しているがゆえに、彼から与えられる苦痛を愛さざるえなかっ
たのだ…。



「なにを考えているんだ、せっかくの食事が冷めてしまう…」
 サタミの声に、ふと私はあの頃の記憶から覚めるように目の前の彼の顔に引き戻される。 

洋館の部屋の窓からは、微かな庭灯に照らされた小さな石造りの噴水が見える。私たちはテラ
スに面した居間で用意されたディナーをとっていた。赤ワインのほろ酔いと彼が見つめる視線
が、私をあの頃の自分に変えていくようだった。

「あの頃の私はあなたに何を望み、あなたは私に何を望んだのかしら…。あなたは私の医者で
ありながらも、私はあなたにとっての患者であるとは思っていなかった。だからといって恋人
でもなく、友人でもない関係…」

「お互いを必要とした良きパートナーといったところか……」
「でも、私たちは別れたわ。お互いを必要としなくなったのよ……」

「いや、違うね……。必要以上に、純粋すぎる関係を求めすぎた…」とサタミはわざとらしく
小さく呟いた。

「あなたが私に強いたこと…それはあなたに対する私の純粋な欲望だったわ…」
私の言葉にサタミは薄く笑った。

「お互いの純粋な欲望か……鞭を手にしたのがきみでなく、おれが手にしたことできみは失っ
ていた欲望を取り戻した…」

「私はあなたに会うまでずっと純粋な欲望を欲しがっていたのかもしれない。でも欲しがって
いるものが何なのか…それに、それを得るすべがわからなかったわ…」

「そして、おれたちはふたたびその純粋なものに導かれるように、ふたたび再会することがで
きた……」

その言葉に私が視線を澱ませたとき、彼は密かに苦笑する。


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