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聖夜の秘めごと
【同性愛♀ 官能小説】

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聖夜の秘めごと-2

 詩織が彼女たちと知り合ったのは、もう15年も前のことになる。
 転勤族の父親に連れられてあちこちの地方を転々としていた時期、2年間だけ通った中学校。
 そこはお金持ちの子女ばかりが通うような学校で、ただのサラリーマン家庭の詩織は明らかに浮いていた。
同じクラスにいた沙耶が何かと気遣って声をかけてくれたのが始まりで、沙耶の幼馴染だという晶とも自然に話すようになった。
『ここの子たちはみんな同じでつまらないの』
『詩織ちゃんはすごく面白い子ね。わたし、あなたとお友達になりたい』
沙耶がそんなふうに言っていたのを詩織はいまでも覚えている。
 面白い、と言われたのが嬉しかったのかもしれない。
 勉強もスポーツも得意で常に皆の先頭に立っていた晶、勉強は苦手だったが持ち前の愛嬌でクラスの雰囲気を盛り上げるのが上手だった沙耶。
 当時から彼女たちは見惚れるほど美しく、生徒たちの中でも飛び抜けて目立つ存在だった。
 詩織は容姿も成績もいまいちパッとせず、本を読むのが好きなくらいで他に何の特技もない。
 誰が見ても沙耶や晶とは不釣り合いだったが、ふたりともなぜか昔からの友達のように何をするにも詩織と一緒にいてくれた。
 だからその学校にいた間、寂しいと感じたことは一度もない。
 放課後は遅くまで教室でおしゃべりをし、休日には彼女たちの暮らす豪邸に招待してもらい、パジャマパーティーと称してお泊り会をしたこともあった。
 話題は学校の先生たちやクラスメートのちょっと毒のある噂話や、沙耶の恋愛話、将来の夢。
 沙耶は当時から恋多き少女で、誰かに告白されたといっては大騒ぎし、その後で付き合ってみると『つまらない男だった』とすぐに別れて愚痴を言う。
 晶は恋愛には興味がないらしく沙耶の話を適当に聞き流し、学校を卒業したら家を出て自分で会社を興したいという夢を語り、詩織は自分には想像も及ばないふたりの話に目を輝かせて聞き入っていた。
 慣れてくるにつれてわかったのは、沙耶には我儘で融通のきかない面があり、晶は興味のある人間以外に対しては恐ろしく冷淡な態度をとるところがあるということ。
 それもまた詩織の目には、ふたりの魅力的な個性であるように映った。
 2年間は瞬く間に過ぎ、詩織が遠く離れた場所へ引っ越すと決まった日。
沙耶はびっくりするほど大きな声をあげてわんわん泣き、晶は沙耶を慰めながらただ寂しげに微笑んだ。
 それはちょうどクリスマスの1ヶ月前で、今年も一緒にパーティーをしようと約束していたのがダメになってしまう、と思うと詩織は残念で仕方がなかった。
 ごめんね、とつぶやくと沙耶は涙に濡れた顔を上げ、
『だいじょうぶ、わたしたちが会いに行くから。これからも、ずっとクリスマスパーティーだけは一緒にやるの』
 と、しゃくりあげながら言った。
 晶も『うん、そうしよう。絶対に行くから』と約束した。
 もちろん、詩織はそれを本気にしたわけではない。
 よくある転校していく友人へのお愛想のようなもので、これまでも似たようなことを言われた経験が何度かあったが、実際には誰一人として引っ越し先まで会いに来てくれた友人などいなかった。
 だからまったく期待していなかったのに、その年のクリスマスイブ、彼女たちは本当に詩織のところまで会いに来てくれたのだ。
 予想外の出来事に詩織は感動して泣き崩れ、ふたりはそれを支えながら『毎年会いに来るよ』と笑った。
 それ以来28歳になる今年まで、クリスマスイブの夜は毎年3人でどこかに集まってささやかなパーティーをするのが恒例行事のようになっている。
 今年の会場は晶の親が所有しているスキー場の近くにある別荘で、沙耶は山小屋だというが、詩織から見ればちょっとした城のように豪華で洒落たデザインの建物だった。
 こういうときどれだけ月日が過ぎても、あいかわらず彼女たちはお嬢様で詩織は庶民なのだと思い知らされるようで寒々しい気持ちになる。
 実際、詩織は中小企業に勤める薄給のOLで面白くもない仕事に心身を削られる毎日だが、沙耶は父親の会社で名ばかりの役員職をもらいながら旅行三昧の日々を送り、晶は自分で立ち上げた会社で目覚ましい成功を収めているらしい。
 いまだにどうしてふたりが自分なんかとの約束を守り続けてくれているのか、詩織にはさっぱりわからなかった。
 普段はさほどべったりとした付き合いはなく、会うのも1年に一度きりだったが、それも友情が長続きするためにはちょうどいいペースだったのかもしれない。
 あるいは、お嬢様たちの気まぐれなのか。
 詩織がぼんやりとそんなことを考えていると、ふいに腕を引っ張られた。


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