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サンタ・カンパニー
【ファンタジー 官能小説】

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-5

「ママ!!」


背後から聞こえた、舌ったらずの高い声。


莉奈の大きな瞳がさらに見開かれて、俺の背後を凝視していた。


俺もまた、ゆらりとその声の方を見れば。


角の電信柱の影に、小さな男の子が立っていた。


自分の存在に気付いたと思ったのか、幼稚園児くらいのダッフルコートを着た男の子は、ここからでもわかるくらい目を潤ませて、こちらに一目散に駆けてくる。


あれが夢威叶か? と訊ねるまでもなかった。


莉奈は持っていたゴミ袋をその場に放り投げて、その男の子の方にまっしぐらに走り出していたから。


「ママァ!!!」


真っ赤な顔をクシャクシャにして走ってくるその姿が、笑えてくる。


……まったく、泣き虫なのは母親譲りだな。


そして泣き虫親子の母親の方が両手を広げて待っていると、男の子は迷わずその胸に飛び込んでいた。


「夢威叶!!」


「ママ、ママ……!!」


ゴミ集積場の前で親子再会なんて、全くロマンチックじゃない。


だけどそんなことなんて一向に構わない莉奈と夢威叶は、隙間なんてないほどにキツく抱き合ってお互い泣いていた。


チクショー、俺と抱き合っていた時より力がこもってるじゃねえか。


だけど、悔しいなんて気持ちは微塵もなかった。


すっぴんのダサいカッコで泣く莉奈の姿が、なぜかとても嬉しかった。


夢威叶が父親に引き取られてから、ずっと抜け殻みたいになっていた彼女。


俺と抱き合っている時でさえ、あんなに感情がむき出しになっていなかったような気がする。


ひとりぼっちの莉奈を、僅かな時間でも幸せにしたつもりだったけど、やはり夢威叶の存在に勝るものはなかったんだな。


そんな2人を遠巻きに見守っていると、夢威叶が走ってきた方から男が歩いて来るのが見えた。


スーツをビシッと着こなした男は、白髪が結構目立ってはいるものの、背筋をピンと伸ばして身のこなしがいい、なかなかの男前なオッさんだった。


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