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「そば屋でカレーはアリですか?」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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08.氷解-3

「きれい事は言いたくないから正直に言うけど」
「うん」
「初めはそのつもりでおまえと付き合い始めたのは事実」一つ咳払いをして嶺士は椅子に座り直し背筋を伸ばした。「でもな、初めて抱いた時に、お、こいつは今までの女とは違うな、って思った」
「ほんとに?」亜弓が意外そうな顔をした。
「うん。どこがどう、ってうまく説明はできないけど、なんかこう、しっくりくる、っていうか、ちゃんと収まるっていうか……」
「へえ」ユカリがカップを口から離して言った。「身体の相性って、あるわよね、確かに」
「やっと見つけたジグソーパズルの正解のピースって感じだな」
「なるほど」
「亜弓が俺にとってそれまでの女と決定的に違ってたのは、身体だけじゃなくてやっぱり気持ちだな」
「気持ち?」
「一緒にいると安らぐんだよ。ほっとできるっていうか……それまでの女とのつき合いは遊びでもあったけど闘いに近くて、エッチを始める時なんかプールのスタート台に乗ってる気分だった。でも亜弓の場合はすでに海の中にいて漂ってる感じ」
「それにしては激しいよね、いつも」亜弓が言った。
「あれはスキューバダイビングとかサーフィンみたいなものなんだよ」
「取って付けたように……」亜弓は笑った。
「俺より年下だけど、身も心も包み込んでくれる感じがしたのは亜弓だけだな」
「あたしとのエッチも闘いだったしねえ」ユカリは笑った。「つき合ってる時も昨夜も」
「嶺士君こんなこと言ってるけど、亜弓ちゃんはどうだった? 嶺士君と付き合い始めて」
「憧れの大好きな先輩と付き合えることになって、あたしもう夢心地でしたー」亜弓は胸の前で指を組んだ。「三度目ぐらいまで、デートではずーっとぽーっとしてました」
「四度目からは?」ユカリが意地悪く訊いた。
「四度目のデートで初めてあたしを抱いてくれたんですけど、すっごく優しくて、最初から最後までずっと気を遣ってくれたから、もっとぽーっとなっちゃいました」
「あーはいはい。ごちそうさま」ユカリが呆れた様に言った。
「気持ちいいエッチだった?」
「そりゃあもう! でもそれは心理的なものが大きかったと思います。予想通りの優しくて紳士的な先輩だ、って」
「ああ、知らなくて良かったわね、大学時代の嶺士のこと」
 ふん、と鼻を鳴らして、赤くなった嶺士はテーブルの真ん中に置かれたチョコレートに手を伸ばした。

「マユミはさ、」ユカリが隣のマユミに目を向けた。「智志本人から聞いてたの? さっき亜弓が言ってたけど」
「うん。実は智志君、こないだ鶴田家に行く一週間ぐらい前にうちに来てね、あたしに相談してきたの」
「相談?」
 マユミは頷いた。「日本を出て行く前に嶺士の家に行くけど、もしかしたら嶺士に手を出してしまうかも知れない、どうしたらいい? って」
「はあ……」
「長い間会えなくなるから、嶺士には最後に会っておきたい、でもそう思ったら我慢できそうにない、って」
「で、あんた何て応えたの?」
「あたしもどうしたらいいかわからなかった。そしたら智志君、嶺士君の奥さんの亜弓ちゃんにこのことをうまく話しておいてくれないか、って頼んできたの」
「で、」亜弓が口を開いた。「あたしが智志君へのお土産を買いにここに来た時、マユミ先輩からそれを聞いたってわけなんです」
「ああ、なるほどね。だから亜弓ちゃんは亜弓ちゃんなりに考えてああいう行動に出たというわけね」
「でも、嶺士君」マユミが前に座った嶺士に目を向け恐る恐る訊いた。「あなた智志君の本当の気持ちを知ったわけだけど、親友として……」
 嶺士は肩をすくめた。
「大丈夫。亜弓のお陰で俺はあいつの親友でいられると思う。これからも」
 亜弓はほっとしたように目を閉じて息をついた。
「良かった……」
「結局あいつはバイセクシャルだったってことだろ? そういう人間って実はいっぱいいるんじゃね?」
「そうね」マユミが笑いながら言った。「うちのケニーもそうだからね」
「ケニーのようにあそこまでオープンにできる人は少ないだろうけどね」ユカリが言ってカップを口に運んだ。


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