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「そば屋でカレーはアリですか?」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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07.真相-3

 俯せになったあたしの背中に、汗だくになった熱い身体を押しつけるように覆い被さり、智志君ははあはあと大きく荒い呼吸を繰り返していました。
 あたしは二度も彼の精液をこの身体の中に受け入れてしまったことを、今さらながらひどく後悔していました。
夫である嶺士にも、まだ一度も中に出してもらったことはありません。でも、今のこの行為は酔った智志君にとってはなおさら全く予定外のことでもあり、まして彼が周到に避妊具など持ってきているはずもなく、かといっていつも嶺士が使うものは二階の寝室に置いてあって、行為の途中で取りに行くことができるわけもなく……。覚悟を決めていたとは言え、あたしは心の中で嶺士に何度も謝り続けました。

 あたしと並んで仰向けになった智志君は半分閉じた目であたしを安心したように見て、一言、すごく……気持ち良かった、と言った後、あっけなく寝息を立て始めました。

 あたしは彼の腕をそっとほどき、客間を出てバスルームに向かいました。
 シャワーを浴びて、念入りに身体を洗い、新しい白い下着に着替えました。そしてダイニングテーブルの横にあるストッカーから黄色い薬の箱を取りだし、中に入っていた一錠を口に入れ、水で胃に流し込みました。
 ほっと息をついてリビングに戻りソファにもたれると、あたしもすぐに眠りに落ちてしまいました。

 不意に目を覚まし、戸外が明るくなってきたことに気づいたあたしは、そっと二階に上がりました。嶺士はベッドの端に丸まって寝ていました。あたしは白いスキニージーンズとイルカのデザインされた青いTシャツを持ち出して来て、リビングで着替えました。
 顔を洗い、髪を整え、キッチンに入って冷蔵庫を開けかけた時、客間から智志君が恐る恐る顔を出しました。
「おはよう、智志君」
 智志君はあたしの顔を見て青ざめ、泣きそうな顔をしたかと思うと、キッチンに駆け込み、その場で土下座をしました。
「ごめん! 亜弓ちゃん! 俺、とんでもないことを!」
 床に額を擦りつけながら、智志君は叫びました。
 あたしはしゃがんで彼の手を取り、顔を上げさせました。
「いいんです。謝らないで。お互い様だし」
「でも、俺、俺、」
 智志君は涙ぐんでいました。
「心の中にしまっておいて下さい。昨夜のことは何もかも」
 白々しいことを言うな、と自分でも思いました。でも、今手を離せば崩れ落ちそうなこの男性には、他にかける言葉を思いつきませんでした。
「嶺士が起きてきても、何も言わないでください、お願いします」
 あたしは自分の口に人差し指を当てました。
「え? だ、だけど、亜弓ちゃん……」
「もし嶺士が昨夜のあたしたちの行為に気づいていたとしても、この後のことはあたしが何とかします。だって、あたしが貴男を誘ったんだし」
 智志はよろめきながら立ち上がりました。
「顔、洗ってきて下さい、いつも通りタオルは洗面台の横の棚に」

 洗顔を終えて戻ってきた智志をダイニングテーブルの椅子に座らせました。
「コーヒーどうぞ」
 カップを彼の目の前に置いて、あたしも向かい合って座りました。
「……亜弓ちゃん、ありがとう」神妙な顔で智志君はぽつりと言いました。
 あたしは小首を傾げて智志君を見ました。彼は小さなため息をついて続けました。「俺、何と言うか……吹っ切れた。嶺士への不純な思いはどっかに行ってしまった気がするよ」
「そう。良かった」
 あたしはほっと胸をなで下ろしました。あたしのやったことは、とんでもなく許されないことだったけれど、結果的に智志君を救うことができた、と思いました。
「亜弓ちゃんは」少しだけ言葉を切って、智志君はあたしを見つめました。「そのために俺を誘ったんだね」
「ごめんなさい」あたしは頭を下げました。



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