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「そば屋でカレーはアリですか?」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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06.陥穽-3

 激しく腰を上下させるユカリを怯えたように見上げていた嶺士は、やがて決心したように起き上がり、一度座位で繋がったまま乱暴にユカリにキスをすると、その身体を押し倒して激しく腰を動かし始めた。
「ああ、もうすぐ、あたしも……」
 息を荒くしたまま、ユカリが甘い声で言った。
「イけ! ユカリ、俺がイかせてやるっ!」
 嶺士は大きく腰を動かし続けた。その全身から汗が流れ、顎からぽたぽたとユカリの胸に落ちた。
「イ、イく、イっちゃうっ!」
 ユカリが大きく身体を反らしてひくひくと痙攣し始めた時、嶺士の動きが止まった。そしてその身体の奥深くから噴き上がった白いマグマが、ユカリの体内に発射された。

 ビュクビュクッ! どくっ!

「ああーっ! 嶺士!」
「ユカリっ!」

 ぴったりと身体を重ね合い、お互いにその背中を抱きしめ、嶺士とユカリはその口同士を交差させて貪り合った。

 嶺士は静かにユカリから身体を離し、その横にバタンと仰向けになった。
 二人ともまだ息は荒かった。それを鎮めるのにずいぶん時間がかかった。

「痛かった」
 最初に口を開いたのはユカリだった。
「とっても痛かった」
 ユカリがもう一度言って嶺士を睨み付けた。
「す、すまん。俺、酔ってて……」
 嶺士は申し訳なさそうに数回瞬きをした。
「今のsexじゃない。あんたに初めてねじ込まれた時のことよ」
「ね、ねじ込んだわけじゃない」
「あたしにはそう感じられたの。初めてだったからね。全然気持ち良くなかった。sexってこんな感じか、って幻滅したわ」
「ご、ごめん……」
「ま、嶺士じゃなくてもそうだっただろうけど」
 ユカリは笑ってベッドを降り、部屋の真ん中に投げ捨てられていた赤いショーツを拾い上げ身につけた。嶺士もバスルームの前の洗面所に脱いだままにしていた黒い下着を穿き直し、ベッドに戻ってきた。 
「水着みたい」ユカリは懐かしそうに言った。「嶺士、現役の時はずっと小っちゃな水着穿いてたよね。智志と二人で」
「脚周りが開放的で好きなんだよ。智志のヤツもそう言ってた」
 わざと智志の名を出して嶺士の反応を窺ったユカリは、彼の意外にあっさりとした反応に拍子抜けしてしまった。
 嶺士はユカリと並んで仰向けに横たわった。
「みんなからおまえらホモか? ってからかわれてたけど?」
「言いたいヤツには言わせておけばいいんだよ。俺は全然気にしてなかったからな」
「そうなのね。智志も?」
「あいつはそう言われて時々落ち込んだ風にしてたこともあったが、俺がいつも気にすんなって言ってやってた」
「そう。いい友だちね」
 ユカリは安心したように柔らかな笑みを浮かべて嶺士に身体を向けた。
「ねえねえ、今になってこんなことを訊くのもなんか変なんだけどさ」
「どうした?」
「初めての時、あたしを愛してた?」
 ううむ、とうなって難しい顔をした嶺士は、目だけをユカリに向けた。
「『愛』とか『恋』とかっていう感情はあんまりなかった気がする」
「高一じゃそんなもんだろうね。要するに『sexしたかった』ってことでしょ?」
「ま、まあ、そんなところかな」
「その年頃の男子って、恋愛の最大の目標は『射精』だもんね」
 嶺士は口を尖らせた。
「で、でも、ちゃんと好きだったぞ、おまえのこと」
「ちゃんとね」
 ユカリは笑った。
「女はそうじゃないんだろ?」
「そうねえ」ユカリは仰向けになり、天井の場違いなほど豪華なシャンデリアに目を向けたまま言った。「sexしたい、とは思ってなかったかな。あの頃のあたしは」
「じゃああの頃のおまえは俺に何をしてほしかったんだ?」
「手を握ってくれれば嬉しかったな。あとは他愛のない会話、一緒に歩く距離感、大切にされているっていう実感、それが感じられれば十分だったかも」
「男だって」今度は嶺士がユカリに身体を向けた。「そうやって好きなヤツと話したり一緒にいたりすると気持ちいいって思うもんだ」
「わかってる」ユカリは微笑んで嶺士の手を取った。「今そう思える人がいるっていうのは幸せなことよ」
 嶺士は拗ねたように口をとがらせ、また仰向けになった。



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