『思い出のプールサイド』-1
もう、夏だね、ゆきちゃん。
もう、泳げるようにはなりましたか。
アナタは一番、心の綺麗な友達。
アナタは軽い、ダウン症だった。
私より、4つも年上だったのに、ゆきちゃんの顔はすごく可愛かった。
スイミングスクールの小さな待合室が、週に一度だけ会えたあたし達の場所だったね。
プールでは、初級コースだけについてる25メートルの端の赤い段から赤い段まで、頑張って泳いでたね。
何回立っても、めげずに…
違うコースで泳いでたあたしに、「すごいね」って言ってくれた。
あの赤い段を見る度、ゆきちゃんを思い出すんだよ。
プールサイドですれ違う度、ハイタッチしたの、覚えてる?
あたしがスイミングやめる最後の日に、泣いてくれたの、覚えてる?
あれから、もう何年も経つね。
あれっきり会ってないけど、そしてこれからも、会える事はないだろうけど
ゆきちゃんは、今でも誰より綺麗な心を持ってると信じてるよ。
今もどこかで、明るく優しい笑顔でいると信じてるから。
アナタは、一番綺麗な心を持った、あたしの親友。
もう、夏だね、ゆきちゃん。