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真っ赤なリース
【スポーツ 官能小説】

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第5章 救いの手-5

その時であった。ドアをノックする音が聞こえた。
「誰だ?」
本部長がドアに視線を向けて言った。
「田澤です。」
それは捜査一課長の田澤であった。
「入りたまえ。」
「失礼します。」
ドアが開くと神妙な面持ちをした田澤が敬礼した後に歩み寄って来た。島田と朱音はすっと横に移動する。そして田澤が本部長の正面に立ち深々と頭を下げて謝罪する。
「今回はうちの立花がこのような事態を招き、誠に申し訳ございませんでした。」
その姿に本部長を始めみんなが驚いた。田澤が頭を下げ謝罪をする姿など今までに見た事がなかったからだ。逆にそれ程の事をしてしまったんだと、朱音は改めて自分の行動に後悔してしまう。

田澤から謝罪を受けた本部長は少し動揺してしまった。朱音の最終的な上長は田澤になる。しかし田澤には責任を振りかけたくはなく島田に管理責任を問う事を決めたのは紛れも無い本部長であった。責任を取る…、そう言い出したら厄介だ、そう危惧した。言葉を頭の中で考えていると、先に田澤の口が開いた。そしてその言葉の意外さに驚きを隠せなかった。

「本部長、今回は立花を謹慎と異動処分で済ませていただけはしませんでしょうか?」
「えっ…!?」
全員がまさかの言葉に耳を疑った。そんな軽い処罰では誰も納得しない事は明らかであったからだ。目を丸くして田澤に視線を向けた。
「し、しかしだね…、そんな処分ではこれだけの騒ぎを沈静化する事は出来ないだろう?」
一体何のつもりだといった、呆れたような言い草で言った本部長に毅然と答える。

「立花は若くて優秀な人材です。これまでも人知れず努力し、誰よりも靴底を擦り減らし、汗を流して数々の事件を解決に導いて来たのは本部長もご存知だと思います。立花は若いわりにはそんな昔ながらの地道な捜査の積み重ねを大事にして、そこから事件解決に繋げる古き良き時代の刑事の姿を体現しているような刑事です。本部長が若い頃の刑事の姿、そのものなのではないですか?」
「ま、まぁ、確かに…。今の若い奴らは過程を大事にせず結果ばかりを急ぐ傾向にあるのは確かだが…。」
「私は立花を立派に育てたい…、ずっとそう思っていました。しかしそれでなくても女性であるだけでいらぬ偏見を持たれて斜めから見られている立花を私が指導すると、ますますその偏見で見られる結果になる。だから私は距離を置いて立花を見守って来ました。今回はその私の判断が誤っていたが故にしっかりと立花を指導教育出来なかった事にも責任があります。私は早く立花を昇格させ周りの偏見を消し去ってやろうと考えていました。しかしこうなった以上昇格は無理だ。しかし立花は弛んだこの今の刑事達を引っ張り立ち直せる事ができる人材です。立花を失う事は我々にとって大きな損失になるでしょう。ですから私は立花を免職にはしたくないんです。」

意外すぎる言葉に全員が言葉を失った。普段クールな田澤がここまで感情に訴えるような事を言うなど誰も信じられなかったからだ。特に朱音は頭の中の血の海が徐々に引いていくような、そんな衝撃を受けたのであった。


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