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処女懐胎実験
【ロリ 官能小説】

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第3話 『エピローグ』-1



 
 『聖職者』……神の教えを曲解する。

 『教会』……大衆の犠牲を強制する。

 『聖書』……健全な思索を汚染する。

 『一神教』……自らの過ちを肯定する。

 『宗教』……――――


 ――――……専任する者は、堕落する。 




「ふうっ……」
 
 日帝本庁の査察官、北見一朗は溜息をついた。 眼がシパシパして、気を抜けば一瞬で安眠の極致へ誘われる自信がある。 約1000名の聖職者に関する動向を全て精査し終えるのに要した時間、50時間。 一朗は3度用を足した以外は一切休まず、当然眠ることもなく、軽食を頬張りながら作業した。

「見事なまでに……クズしかいないな……」

 首をコキコキ鳴らし、独り言ちる。 執務室には彼しかいない。

「孤児を篭絡して手籠めにするわ、受けた告解を元手に脅迫して愛人に堕とすわ、神への奉仕と称して自分の性感に利用するわ……よくまあこれだけ好き放題できるもんだ。 それに引き換え、貧乏人は健気だぜ。 教会に宗教寄付して、宗教関係は税金を免除して、宗教講演を聞いて、宗教裁判に従って、宗教免罪まで受け入れてさ。 自分だって貧しいくせに、収入の1割を教会に寄付するとか……『一般人と聖職者を比較し、より品行方正な生活態度がどちらか報告せよ』なんて、愚の骨頂にも程があるよな」

 窓の外では、イーユー・ユニオン、ウリスト市国の情緒豊かな街並みが、夕日に紅く映えている。

「それにしても……さっきのレポートは皮肉だよ……」

 一朗の脳裏には『科学的神学研究』と称し、聖書に記された諸々の超常現象を再現すべく、実験活動した司祭の記録が浮かんでいる。 司祭は自分の研究でもって、何かを証明しようとしていた。 おそらく、聖書が真実だと証明したいのだろうが、聖書はあくまで『象徴』『寓話』の類であり、科学的真実を記録したものでは有り得ない。 『科学』の切れ端を学んだのなら『聖書的事実と科学的真実の違い』くらいは分かっても良さそうだし、両者が矛盾なく共存できる発想に貢献できたのに。 頑なに聖書が事実と証明しようだなんて、司祭は本末転倒な自分に気づくことはなかったんだろうか。

「自分が試す側に回ってるつもりなんだろーが、真逆……試されてるのはアンタらさ」

 一朗の視線の先には、ウリスト市国の中心、法王庁の尖塔が。

「……『支配階級を一神教で固めて、統治機構に教義を組み込んで、末端の集落代表に下々の祭祀役を配置して』……『村の会合を宗教施設に設定して、教義の原典を普及させて、仲裁や裁定の権限を一定割合で宗教に委ねたらどうなるか』……フン」

 自問自答しつつ、鼻で笑う。

「……『宗教は、果たして市民全体の幸福のために作用するか』……『それとも特権を享受する道具に堕落するか』……そんな愚問、聞くだけ野暮さ。 最初から調べるまでもない。 わざわざ眠いのを我慢して分析しといてなんだが、結論は火を見るよりも明らかだっての……」

 一朗はモバイルから報告書のフォームを呼び出した。 既にウリスト市国の資産運用や法令順守状況は査察済み。 現在の作業が終わればウリスト市国でのタスクは終了だ。

・宗教従事者のモラル : 低下の一途。 昨年度より5%減。
・宗教従事者の貢献 : 低下の一途。 昨年度より4%減。
・宗教従事者の性暴行 : 多発化。 昨年度より5%増。
・宗教従事者の横領 : 多発化。 昨年度額より3%増。
・宗教従事者の詐欺 : 多発化。 昨年度件数より――……。

 数多の項目に対して瞬時も考え込むことなしに、一朗は素早く結論を打ち込む。 数分で最後の項目が現れる。

・今後、ウリスト市国は現在の統治機構を継続すべきか。 すべきでないとすれば、どのように処置するべきか。

「……」

 ここで初めて、一朗はモバイルの操作を止めた。 

 ウリスト市国の統治機構存続は、一朗の判断にかかっている。 彼が、例えば『滅亡』と判断すれば、本国の軍がたちどころに市国すべてを灰燼に帰すだろう。 もしくは『法王の変更』を提案すれば、即座に本国の行政機構が出張ってきて、市国の政治体制に大きく干渉するだろう。 もし彼が『少女を強姦した司祭を排除せよ』と提言すれば、その通りになる。

「……フン」

 つまらなそうに、鼻を鳴らす。 一朗にとって、査察は査察であり、自分の意志を反映させるのは趣味じゃない。 少女を好き放題に犯す老司祭は醜悪ではあるが、だからといって、正す義理も仁義もない。 最後の設問に対し、結局一朗は、

『現状維持。 宗教統治機構は堕落の極みにあるが、まだ退廃の余地は残されている。 今後継続して宗教統治が続いた場合に現れる品性の汚点は、経過観察するに値する』

 と寸評を残し、報告書を送信した。





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