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真っ赤なリース
【スポーツ 官能小説】

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第4章 過信が生んだ落とし穴-9

澤田と美弥妃の背後には特売のトマトが山積みになっている。朱音の目には一瞬そのトマトの果汁が噴き出したかのような錯覚に映る。いや、そうであって欲しい、そうに違いないと思った。しかしトマトの赤よりも濃い赤をした果汁が激しく飛び散り床を染める。

「きゃー!!」
その光景を見ていた買い物客から上がった悲鳴で朱音はようやく目の前の恐ろしい現実を受け止める事が出来た。人が人を刺す瞬間、人間の体からあんなにも血が吹き出る瞬間を見た事はない。とてもじゃないがドラマを見ているかのようになど思えない生々しい光景に朱音は正気を失った。

「パーン!!」
自らが発砲した銃声に驚いたぐらいに我を見失っていた朱音。次の瞬間、新たな果汁が澤田の頭から噴き出していた。買い物客から再び悲鳴が上がり、非日常的な惨状に怯え慌てて店の外へと逃げ始めた。

「ハァハァ…、ハァハァ…」
両手で強く握りしめられた銃の銃口は澤田に向けられたままであった。そのまま体が動かなくなってしまった朱音は目を見開き汗を噴き出させたまま固まっていた。崩れ落ちる澤田と美弥妃はまるで人形のように床に転がる。一体何が起こったのか、自分が何をしたのか、全く理解できずにいた。気づけば自分の周りには誰1人といなくなっていた。いるのは体から血を流す人形のような人間が2人。それを亡骸だと認識した瞬間、朱音は足から床に崩れ落ちた。騒音も何も聞こえない。周囲の風景も見えない。朱音の視界は全て赤に染められていた。

朱音の耳にかすかにサイレンの音が聞こえたような気がする。そして複数の足音がこちらに近づいて来る事に気付く。
「こ、これは…」
そう絶句したのが島田の声である事に気づく。しかし朱音の体は動かない…と言うよりは脱力し力が入らない。自分が誰で何をしているのかさえも分からない程に意識呆然としている朱音の肩を揺する島田。
「おい!立花!大丈夫か!?何があったんだ!?」
朱音は魂が抜けたかのような姿でゆっくりと島田に視線を向ける。
「島田…さん…」
そう呟いた瞬間、朱音は意識を失った。

意識を失った朱音の脳裏は真っ赤に染められていた。もうすぐクリスマス。サンタの衣装に象徴されるように赤はクリスマスにおいて心をウキウキさせる色だ。しかし朱音の頭の中を染める赤はそれとは全く意味合いの異なる赤なのであった。




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