第1話 『少女にとって』-3
このころから、身体の調子がおかしくなった。
熱っぽい気がする。 とても、眠い。 それに生理がこなくなった。
吐気がして、吐いても吐いても何も出なくて、それでも吐いた。 口の中がすっぱくなるものが欲しくて、ライムやレモンやオレンジ、神父様がくれる果物ばっかり食べていた。
だんだんお腹が張ってきた。 固くなってきて、いままで来れてた服が入らなくなる。 神父様が持ってきてくれる服は青地ばかりだから、細めに見えて嬉しい。 黄色とか、イヤ。
お腹の中で、コロコロ転がってる感じ。 たまにドスンと、何か飛んでくる。 お腹はどんどん大きくなって、でも吐気はなくなった。 だから、今まで食べれなかった分、なんでも食べるよ。 だって何でも美味しいんだもん。
久しぶりに司祭様がきた。 お腹に油をぬって、機械を中てて。 司祭様はニッコリ笑って、『おめでとう、立派な男の子だよ』と仰った。 どういう意味か分からなかくて、とりあえず『はい』と答えた。 後で神父様に意味を聞いたら、あたしは妊娠していて、お腹の中に男の子がいるんだって。 だからこんなにお腹が大きいのかって、納得した。 食べ過ぎで太っちゃったかもって、心配したのがバカみたい。
お腹が凄いことになってきた。 体の芯がポカポカする。 季節は秋を過ぎたけど、全然冬って感じがしない。 お腹が重い。 重すぎる。 あと、一人でトイレが出来なくなった。 お腹が邪魔で手が届かなくて、神父様に羽で掃除してもらうことになった。 最初は恥ずかしかったけど、一週間で慣れた。
神父様がロバを連れてきた。 これから毎日、ロバにのって近くの丘に登ることになった。 標高が700メートルあるから、丘っていうより山な気がする。
ロバは、乗り心地が最悪だった。 振動がすごくお腹に響く。 お腹が小さいときなら跨ってポクポクできたかもしれないけど、今のあたしは、膝を揃えて横乗りするのが精一杯で。 お腹が辛くて途中何度も降ろしてもらって休むから、教会から丘まで、毎回往復で6時間はかかる。 辛くて、痛くて、何のために丘までいくのか全然分からないし、毎日泣いた。
ロバで出発するのは朝ご飯の後なのに、この日に限って、お昼過ぎに出発した。 もうお腹はパンパンで、時々身体がキュッとして。 赤ちゃんはグリングリンして元気良すぎだし、お腹が大きすぎだしで、食欲がないから、朝から何も食べてなかった。 丘の上で、神父様から暖かい飲み物を貰った。 呑んだとき、お腹の下の方がキュッてなった。
教会に戻った時には、すっかり夜になっていた。 寒い、辛い、しんどい。 しかも、身体がなんか変。 お腹の底がジンジンして、体のあちこちに力が入って動きづらい。 おまたがパンパンで、ずっとおしっこしたいんだけど、いざしようとしても出てくれないし。 ウンチも同じで、したいんだけど、きばってもダメで、何も起きない。 すごく疲れていたから部屋で休みたかったのに、神父様はあたしを厩舎に連れて行った。 休みたい、というと飼葉を集めて寝させてくれた。 すぐそこにあたしの部屋があるのに、意味が分からない。