第１９話 『玉入れ、棒引き、ローハイド』-2
プログラム６番。 Ｃグループ生による『棒引き』
ぼんやりと競技準備する生徒達を眺めていた南原に、
「膣のみが利用可な競技です。 選手は手足を移動以外に使ってはなりません。 まず両陣営の中央に並べた棒に這ってゆき、尻から棒に向かって後退します。 棒の先端を無事に膣に挿入すれば、あとは自陣に向かう。 棒を膣襞で相手よりも強く締めなければいけないので、最も膣を酷使する競技といえましょう。 棒全体が自陣に入ると、そこで棒の獲得が認められます。 勝った選手は棒を咥えたまま第５姿勢をとり、空高く棒をかざし、全体の決着がつくまで待機になります。 なお、この過程で棒が抜けたり、棒が倒れた場合は棒の獲得は無効になるため、選手は最後まで気を抜くことはできません。 負けた選手は、自陣に戻って第４姿勢（Ｍ字開脚）をとり、まだ勝敗がついていない生徒を応援する。 例年怪我が多いため、今年からいくつか工夫しております」
教頭が聞かれもしない蘊蓄を語る。 沈黙が嫌いなんだろうか。 太鼓持ちは間があくのを何より嫌がるというが、この女性もその類なんだろう、と南原は思った。
「まず、棒の数です。 わたくしどもとしては、膣の吸引力を発揮するため、１本の棒につき２人が取りつき、互いの膣圧でもって引っ張り合う展開にしたいと考えておりました。 ゆえに１本１本に群がる生徒を減らす必要があり、昨年は棒を１００本用意しております。 けれども、結論から申し上げますと、こちらの思惑からは外れてしまいました。 脚が速い生徒が１本獲得すると、すぐ次の棒に向かいます。 どんどん空いた棒が少なくなり、結局最後に残った数本に両クラスが群がって、くんずほぐれつの見苦しい様相になったため、その場で没収競技を宣告せざるを得ませんでした」
「……なるほど」
気の無い相槌にも関わらず、教頭は滔々と説明を続ける。
「過年度の反省を踏まえ、今年は棒を３４本用意してあります。 １クラス３５名からクラス旗役の生徒を抜き、これだと全選手が過不足なしに棒を咥えることでしょう。 後は、相手クラスと１対１で膣圧勝負になる展開を想定しております」
「……色々考えてるんですねぇ」
仕方なく相槌をうった南原に、教頭は得意気に首肯した。
「ありがとうございます。 他にも工夫はありまして、横から棒に跨り、陰唇で棒を挟むことで競技に参加する不心得者がでないよう、棒には、両端以外はローションをみっちり塗布しています。 また、棒の重さは１０キロを超えるので、這うのが図抜けて早い生徒がいたとしても、一瞬のうちに膣で咥えて持ち去ることはできません。 多少のリードは持てるかもしれませんが、結局は互いに棒で繋がり、膣圧比べになるはずです――そろそろ始まりそうですね」
会場の準備が整い、号砲がなる。 号砲を撃つ生徒は一発ごとに絶頂しているため、これで二十回近くイった計算だ。 最初の対決は『Ｃグループ２組』対『Ｃグループ３組』だった。 南原は、選手が膝をつけてヨチヨチ這うのかと思って見ていたが、両クラスの動きは予想を超えていた。 ３組は尻を高く掲げ、確かに両手両足は着けていたが、高い姿勢を保って走る。 一方２組は、両足同時に地面を蹴り、両手を同時に前につき、あたかも脱兎の如く駆けてゆく。 全体的に２組の方が速く、特に背中に『２９番』『９番』と描かれた２人の生徒は他を圧する速度を見せた。 そのまま２人は、３組の先頭グループが目指す棒に突進する。 てっきり自陣側の棒先端を咥えると思いきや、２人は棒を追い越して、相手陣営側の棒先端を膣に収めた。 予定が狂ってマゴマゴする３組を尻眼に、棒を挿入した勢いで猛然と後退する。 こうなると勢いを止める術はなく、最初に２組が棒を獲得した。 ３組側としては、棒の狙いを掻き回され、どうしても棒に取りつくタイミングが乱れたのだろう。 ３４本の棒のうち、２２本を獲った２組の勝利となる。
南原は内心で拍手していた。 四つん這い、といえば『ハイハイ』しか思い浮かばなかった自分は浅はか以外の何者でもない。 競技である以上、ルール内で最善を尽くすべきであり、埃まみれになって兎駆けし、相手側の先端を膣で咥えた彼女たち――攻めた２組の少女達――は全く正しい。 相手クラスが明らかに動揺していたのは、つまり２組が練習では手の内をみせず、本番で一気に攻めたからに違いない。 こんなふざけた競技に対しても、２組の生徒たちは『いかに勝つか』をしっかり準備し、作戦をもって臨んだわけだ。 オマンコで勝利を喰らう、その意気や良し――と南原は思う。 お蔭様で目が醒めた、と。