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探偵、依頼受付中 【鏡】-3

 田中正二が語るのはこのような話であった。

 一昨日の正午過ぎ、小林宅においてその家の主である小林鏡矢が何者かに殺害された。死因は腹部の複数の刺傷による失血死。
 現場の状況やアリバイ、動機から以下の三人に被疑者は絞られた。

1.小林鏡歌
被害者の実の娘。親子仲がかなり悪く普段から被害者に対して「早く死ね!」など暴言を吐いていた。

2.青木祐介
被害者の友人。被害者に多額の借金があり、最近は厳しく返済を迫られていた。

3.中島冴子
被害者の家の使用人。ちょっとしたミスでよく被害者から文句を言われていて、つい最近減給を言い渡された。

 そして問題のダイイングメッセージは……。

 とそこで田中刑事は一枚の写真を取り出した。その写真を命と望の二人は覗き込む。
「この手は被害者の左手で、血で紙にメッセージを遺しているんだ」
「紙には『かがみ』と書かれているな」
「そう、これの意味がさっぱりわからない」
「『かがみ』というくらいだから鏡と名のつく小林鏡歌が犯人でいいんじゃない?」
命は面倒くさそうに答える。
「先生、それはさすがに……」
「わかっている望君。そう考えるのは素人だなってことを言いたかったのさ!」
(素人でもそんな安易なこと考えません)
 望は心の中で静かにツッコむ。
「これは、犯人が鏡歌に罪をなすりつけようと書いたものに違いない!」
「本当ですか先生!つまり偽装のダイイングメッセージということですね。どうしてですか?」
 ようやく探偵っぽくなった命に少し感動し、目を輝かせる望。そして二人は息を飲み命の次の言葉を待つ。
 そして命は拳を胸の辺りに突き出し、自信満々に言う。



「勘だ!!」

 その答えを聞いた田中刑事と望は見事にずっこける。
「そうだろ、中田…じゃなくて田中!写真では左手で書いているが、被害者は本当は右利きなんだろ!?」
「いや、被害者は左利きだが……」
 田中刑事はなんとか体を起こし、答えた。望はまだ机に突っ伏している。
「じゃあこの事件迷宮入りだな。帰れ中田」
 軽く意見を否定され不機嫌になった命。もう田中とすら呼ばない。
「いやいやいや、先生、もっと考えましょうよ」
「面倒くさい、却下」
 見た目はビシッとしたまさに『できる女』といった風貌の命だか、今日はまったくやる気がないようだ。
「というか、実は結構真面目に考えてはいるのだが眠くて全然考えがまとまらない」
 あれだけ寝ていてまだ眠いらしい。
「…朔夜君でも解けないとはな」
 田中刑事はうつむき、がっかりした顔を浮かべた。


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