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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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初めての後輩-3

相も変わらず賑わうお馴染みのドーナツ店。いつもは巴ちゃんや風馬君と一緒だけど今日は違う、茜ちゃんと言う新しい、いわば自分らの巣に新人を招いているような。

「へぇーこんな所にもあったんだ。」

注文もそこそこに済ませると彼女は新天地に足を踏み入れた旅人の如く辺りを見回し。

「ふふ♪ドーナツ店は初めて?」
「ええーと、友達とは何度か行きましたけど、ここ最近は。」
「行ってないの?」

するとお冷を一口し、申す。

「…行けないんです、もうほとんど一緒にはなれないから、まぁお話は出来るけど。」
「……喧嘩でもした?」

そう問うと首を横にフリフリし。

「違うんです、私転校したから。」
「っ!!」
「中学を卒業して、それからてっきり友人と同じ高校に行くと思ったのに、父が急な転勤を申しだされたみたいで。」
「……。」

グラスを両手に握ったまま固まり、口を開けたままその話を暗い顔で視線をグラスに置いたままの彼女を見つめる私。

「…もう、そう決まっちゃった時はショックで悲しくて、教室に入るも周りの人はもう島が出来ていて、私はいわば蚊帳の外状態で。」
「茜、ちゃん。」
「私、音楽が好きだから担任の勧めもあって今の吹奏楽部に入部して…、最初はそこでも…まぁ無視されるってほどでもないけどそんなにばぁーーと歓迎される感じでもなくてやっぱり教室の時と同じ…そう諦めてたら……柊先輩が声を掛けてくれて。」
「……。」
「あの時、最初は驚いたけどそれから色々と親身になって楽器の手ほどき等をしてくれてとても嬉しかった。」

…同じだ。

「えっ?」

いけない!心の中で呟いたつもりがつい口に出てた。ハッと思い唇を手に添えるも後の祭りで。

「お待たせ致しました。」

注文した品をテーブルに置き、一礼して去って行く店員。

少し間を置いた所で「どういう事です?」と問う彼女。

もはや誤魔化しきれないと観念し、私は自身の事を紐解くように打ち明ける。

「……そう、だったんですか。」
「うん、てゆーか良いよ敬語は、あとその先輩っていうのも。」
「いえ!そんな訳には参りません!私にとって貴女はこんな私を救ってくれた救世主、それを先輩を言わずなんと申すか!…ですっ!」

…うわぁ。

お皿の上もすっかり空となって先輩後輩トークもすっかり盛り上がり。

「ドーナツもいいけど担々麺とかもいいね。」
「あれ、先輩ドーナツ一筋じゃなかったんですか。」
「そこまでは言ってないと思うけど。」

レモンティーを一口し、ソーサーに置いた所で。

「じゃーここは柊先輩とその伊吹さんって人の出会いの場って訳ですか。」
「まぁねー、今でも昨日の事のように思い出すわ。」
「何かロマンチックー♪」
「そうー?たまたま待ち合わせてた友人がキャンセルしちゃったそうで、そこで偶然近くにいた私が誘われてね、あれがなかった今の私はなかったかも。」
「ならこの店に銅像の一体でも建てないとですね♪「内気な少女の原点」って、お二人の姿をしたものを。」
「ぶぁっはっはっはっぁ♪ちょっと笑わせないでよ!」

危うく咽るところだった。本当面白くて良い子。

「あぁーすみませんすみません!」
「……まっ、それからはどんどん友達も出来て彼氏も出来て…。」
「えっ先輩彼氏も居るんですか!?」
「うん!私とあんまり身長男子にしては変わらないし、運動は少々得意ではないけど絵がとっても上手で美術部に入部していて、母子家庭だけど母親の事とっても大事に思っていて私の事を一番に考えてくれる優しくて真面目で誠実な素敵な人よ。」
「…へぇー、先輩がそこまで言うなら一度あってみたいです。」
「勿論!けど盗っちゃやーよ♪彼は私の物だから、もう二度とあんな…。」
「?」

ヤダ私ったら、彼女に何て事を…。

不意にあの子、稲葉さんを思い返す。彼女はあれからどうしているんだろう、そりゃあんな酷い真似許される事ではないけど、でも元はと言えば私が。

一瞬、稲葉さんと茜ちゃんが重なって見えてしまった。

「先輩?」

動揺する私を見かねて声を掛ける。

「どうしました?顔色悪いですよ?」気分でも悪いですか?」
「ちっ、違う!何でもない何でもないの!ごめんね!」
「?」

バツが悪くなり空気を変えるように逃げるように半ば強引に店を後にしようと声を掛け席を立つ。



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