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海外赴任
【フェチ/マニア 官能小説】

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家政婦との小旅行-31

ドアをノックする音が聞こえていた。芳醇な珈琲の香りが新築の室内に分かりやすく漂っていた。アスカではない。貴金属を持って来させた時、全ての部屋を開けるゴールドキーで当たり前にダイヤモンドを運んで来たのがアスカだった。ドアをノックする距離感の女性に心当たりはなかった。

「誰なんだ?」
「珈琲をお持ちしました」

始めて聞く声だ。若い声だった。侑香でなくエレナでもない。他の子だろうか。入りなさいと促した女性は、完全なアジア人の若い女の子だった。

「珈琲です」

珈琲カートを引いて淹れたての珈琲を進める女性は、一目で素人だと伝えてるように緊張した瞳で僕に勧めていた。

「ありがとう。気が効くね」
「somyです。わたしはsomy。アスカさんの友達です」
「そうか。そみぃでいいのか?」
「合ってます。アスカさんがダイヤモンドを持ってくるように言ってました。どこですか?」

テーブルに置かれたダイヤモンドの束に気付いたsomyは、心からびっくりした声をあげて驚いていた。

「これ本物?」
「その通りだ。大切に返して来なさい」

硝子細工に触れるような、覚束ない手付きで珈琲カートにダイヤモンドの束を載せたsomyは、重いと笑って僕を和ませていた。

「珈琲ありがとう。早く返して来ない」
「OK。でも、怖いから一緒に行ってくれますか?」

苦笑いしてしまった。
somyの言う通りだろう。紛失したら途方もない現地の金額に相当する。素人らしい要望だった。アスカは何でまた素人を寄越したんだろう。幾つも聞きたいことがあることを理解した僕は、アスカを訪ねようと腰を上げていた。

「NO!!」

全裸でベッドから立ち上がった僕に、SoMyは必死に言葉を返していた。流暢なスペイン語で話すSoMyの慌て方に全てを理解して笑ってしまっていた。

「分かった。間違った。バスローブを取ってくれ」

SoMyはクローゼットから取り出して、目を背けて僕の前に差し出していた。苦笑いした僕は、本当の現実を理解して目を醒ます為に、もう一度珈琲を啜ってからSoMyを連れ添って部屋を後にしていた。

これが、アスカの狙いだろう。
凄い女だ。これもプロの仕事なんだろう。全ての側面で、そつなくプロ行為を続けるアスカ達に圧巻されていた。完全に覚醒を取り戻した僕は、フェティズムに支配された意識を完璧に取り除かれ、エレナが居るリビングに向けて素面で歩き始めていた。

「SoMy、ダイヤモンドは私が持っていく。あとは良いよ」
「OK。ばいばい」

軽く会釈したSoMyは、安堵の表情で両手を振ってその場を後にしていた。
エレナが待つリビングに向き合った僕は、このダイヤモンドの束をどう説明するか躊躇ってしまっていた。何食わぬ顔で入っても良かったが、覚醒した意識は躊躇いを自覚させていた。どうしようか。悩んでいたその時だった。

「面白い人。預かっておくわ」
「アスカ!やっと会えた。会いたかったよ」
「よく言うわ。わたしね、全部見てたからね。あんた凄いよ。噂以上。凄いもの見ちゃってこっちが興奮しちゃった」
「アスカ、お前達こそ凄すぎなんじゃないか」
「それが望みなんでしょ。日本を離れて若い女性と戯れる。これ日本人の男の夢でしょ」

日本人のアスカに正論を返され、何も言葉が出てこなかった。全て正解だ。この為にここまでやってきたのは事実だった。

「ダイヤモンドは片付けておくから早くエレナさんの所行った方がいいと思うよ。3時間30分。あなたは、その時間何してたの?て言われるわよ」
「寝てたでいいだろ」
「あっそう。じゃぁね」

アスカは正解を認める頷きを返してカートを引いて奥の部屋に向かっていった。
あとはエレナだ。エレナは何をしているのだろう。怖じける心を押し込んで、強い心で扉のノブを回していた。バスローブを羽織ってリビングに踏み出した僕は、目の当たりにした光景に言葉を失ってしまっていた。


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