全力疾走-1
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▲ 全力疾走
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たるんだ脇腹が痛くなるくらい、心の底から笑った。
きっと、笑う前と笑うあとではウエストマイナス4センチ(※個人の感想です)
そんな感じの笑いが、ようやくおさまって。
「……なんかさ、もう子供会、遅刻だね?」
とアタシ。
「ああ、カンペキ遅刻……まあいんじゃね?……オレ、足こんなだし……あ、そう言えばオマエも」
とユズルくん、ミニスカ姿も忘れてガニ股でしゃがみこむと、
「血は止まってるけどこれ、消毒しとこうぜ?」
アタシ自身も忘れてた、アタシのヒザの擦り傷をのぞきこんで、
「座れよ、ホラ」
床のフローリングをポンポン、と叩いた。
「べ、べつにいーよダイジョブだし」
チョッと照れくさくなって、首を左右にブンブン振りながらアタシ、言ったんだケド。
「いーから座れ、ホレッ」
ユズルくんったらまた、乱暴にアタシの腕を引っ張って、
ドスン
って、我ながら大きなシリモチの音を立ててアタシ、ゴーインに座らされてしまった。
ここが1階のユズルくん家じゃなく、2階のアタシん家だったらきっと、下の階から苦情が来たカモなシリモチ。
お尻をついて座り込んだアタシと、見おろすユズルくんのあいだに、7分丈のパジャマのヒザ小僧が、ふたつ。
アタシのヒザ、ふたつとも、チョッピリまだ血がにじんでる。
「じっとしてろよ?」
ユズルくん、アタシの両ヒザのあいだにひざまずいた。
ほぼ等間隔に、ヒザの辺りがふんわりくすぐったいのはきっと、カレの吐息がかかるから。
「チョッと痛いかもだから我慢しろよ」
って言いながらユズルくん、床に落ちてた消毒液のボトルを拾って、キャップを開けておもむろに、
シュッ。
と、霧状の液を吹き付けた。
「ツッ!?」
と、アタシ思わず身を縮めたんだケド。
それ、傷がしみて痛かったからじゃなくって、ただ消毒液が冷たくて、ビックリしただけだった。
「おい、痛かったのかよ?……ゴメンな、大丈夫か?」
ってユズルくん、すっかり勘違いしちゃって、顔をあげて心配そうにアタシをのぞきこむ。
ほんとはチョッと冷たかっただけなのに。
さっきまで両ヒザにかかっていたカレの吐息が今は、アタシのまつ毛をくすぐっている。
顔スゲー近いんですケド。
相手に息かけちゃいそうでな気がして呼吸できないんですケド。
ヤバい。
ナンでこんなにキンチョーすんだよアタシってば。
こっちがユズルくんに治療してあげる側の時は不思議と、オトナの余裕って言うか、ドキドキを楽しむくらいのゆとりがあったのに。
「オマエさ、……顔真っ赤じゃね?……そんなに痛かったかよ?」
そ、そそそそそりゃあそーですよ息してないんだからアタシ。とりあえず痛みは無いから首をまた左右にブンブン振るしかないですよ。
「ふーん?………まあいーけど、痛かったらホント、言ってくれよ?」
と言ってユズルくんの顔、やっと接近状態から離脱してくれる模様。
ふう。
アタシも、やっと、文字通り、ひと息つける。
ハズ。
と、思ったときだった。