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「trip」 or Treat
【コメディ その他小説】

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暴走-3

てゆーか待て待て。
アタシの悪口って一体どんな!?

「まあ実際言ってたのってウチのオカンなんだけどさー」と、相変わらず鼻のアタマをポリポリしながら、
「同い年のオマエん家のママがさ、独身で、ちゃんと仕事しながらオマエのコトも育てててさー、しかも結構キレイでーみたいなこと、ウチのスケベオヤジがさ、オカンの前でウッカリ言っちまってさー」と、申し訳なさそうにユズルくん。
「へえ?」
あのチョッとイケメンのユズルパパがアタシにそんな高評価だったとは知らなかった。

「……そしたらオカン怒り出して……オンナのシット、っての?」と、ユズルくんの言葉はゆっくりとだが、続くようだ。
「……そしたらもう、あんなのはただのだらしないバツイチオンナだーとか、オトコの前でキャラが変わるんだーとか、案外ウエスト無いだとか、ボロカス言い出しちまって」

「……」
うーん、バツイチのとこと、ウエストの件は間違って無いですケド。
もしかするとオトコの前でキャラが、ってのも、普段はゲームばっかで引きこもってるから、ONとOFFの差がハンパないハズだし案外、ハズレでもないカモだケド。

「……ウチの親、アホだからそれで大ゲンカしちまって、先週からずっと口きかないし、今日なんて日曜だってのにどっちも別々に出掛けちまって…」
ここまで言ってユズルくん、ふう、と深くため息をついた。
「……だから学校で、オマエん家のママのせいでウチがヒデーコトになっちまったぞーって、オマエのコト、からかっただけだったんだけどオマエ、なんかやけにスンゲー怒っちまって……『あんなのでもバカなりに頑張ってるし、余計なお世話だ!!』とか、『アタシの家族なんだから、勝手なコト言うんじゃねぇ!!』って、さ」

あの子が?
ウチのアカリが、そんなことを言ってくれたの?

ウチの中では「アンタが早起きできないのは夜遅くゲームばっかりやってるからだ」とか、「アタシの服勝手に着るな、ソデ伸びててバレてるぞデヴ」とか、「チクビ黒いんだからノーブラヤメレ見苦しい」とか、生意気な嫌味ばっかり言ってるから、スッゴく意外だった。

「……まあその、いろいろさ」
驚きを隠せずポカンとしてるアタシをよそに、
「……ゴメンな?」
色白の小顔を真っ赤にしてユズルくん、言った。

「もういいよ……こっちこそ、ユズルくんにそんなカッコまでさせちゃって……しかもキミん家の親がそれでケンカとかホントに……」
と、アタシ。
「……まー、ウチの親の方はもともとケッコー前からアレだったから、オマエのママの件はキッカケ?みてーなもんだし気にすんな……あと、本気でそのクン付けヤメレっての」
そう言ってユズルくん、チョッと笑った。

気が付くとアタシも、つられて笑ってた。

クソ生意気なだけのガキだと思っていたウチの子は、アタシの知らないところでは、ビックリするほど家族思いだった。

目の前のユズルくんもまた、親同士がどうやら仲が悪くっても、ちゃんとアタシ(今はアカリってことになってる)を気遣ってくれる優しい男の子だった。

ちゃんと報われてるじゃん。アタシ。
絵に描いたようなダメダメ人生だけど、ちゃんと。
しょっちゅうイヤなことは起こるし、失敗も多いケド。そのたびに、全ッ然報われない人生だとか思っちゃうケド。

まったく報われてないって訳でも、ないみたい。

なんか、昨晩フタマタゲス野郎と別れたくらいでヤケになってたのがバカみたい。

そんなこともごちゃ混ぜにこみあげてきてアタシ、笑いがしばらく止まらなかった。

ひそかにチョッピリ泣いたカモだケド。


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