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「trip」 or Treat
【コメディ その他小説】

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暴走-2

ここから先は慎重に。
だってもし足の小指のツメが折れたり割れたりしていたら、くつしたと一緒に巻き込んで完全に剥がれちゃうカモだし、そうでなくてもくつしたの繊維に引っ掛かっただけでもかなり痛いハズだし。
そおっと、そおーっと。
「ツッ!?」
「あっ、ご、ごめん痛かった!?や、やめようか!?」
「いや、だ、だいじょうぶだから、つづけて」
なんだか、遠い昔の初カレとの初めての夜の時とデジャヴーな感じの会話。攻守逆転デスケド。

ユズルくん、女装してるせいでずいぶん見た目はオンナノコっぽいケド、言葉づかいがワイルドで乱暴だケド、優しいとこもあって、可愛い普通のオトコノコ。
そしてアタシは、この子からしたらオカンと同い年のババア。

わかってるつもりだケド、イケナイコトしちゃってる感ハンパない。

アタシだけ、勝手にときめいてるうち、
スポッ、と、くつしたが脱げて。

「あ……」

やっとのコトで、患部があらわになったケド。
それほど、血は出てなかったみたい。
ケドやっぱり、小指のツメが少し、割れて変色してる。
指自体は腫れてないから、骨が折れたりとかは無さそう。
「指、動かせる?」
「お、おう……動かせるよ」
傷ついた小指を、念のため動かしてもらってみる。
「どう?」
「チョッと痛いけど、動かしたから痛い、とかの痛さじゃないなあ」
「じゃあたぶん、骨とかはだいじょうぶだと思うよ……んじゃ、いちおう消毒して、念のため巻いておこうか、ホータイ」
「大げさだな?」
「歩くときにクツのなかでツメに激痛が走ってもイイ?」
「よくないよくない、巻いて巻いて、ホータイ巻いて」
「はいはい」
そんな会話の数分後には、白いホータイを巻かれて小さめのソーセージ大にふくらんだ小指が出来上がっていた。
ズレないように、上からテープも巻き付けてある。
「これじゃ、くつした履くのあきらめなきゃ、だね?」
「コスプレは中途半端になっちまうけどまあ、しょーがねーよ……ありがとうな?」
「どーいたしまして……って、まだ参加する気なの?その足で?」
「だってそういう約束だったろ、オマエとさ」
照れ臭そうに鼻のアタマを掻いている仕草は、いくら女装が似合ってても男の子そのものだ。
「約束!?」
「忘れたのかよ!?……この前、先週の月曜か火曜だったか、オマエん家のママの悪口言ったらオマエ、えらくキレてケンカになったろ?」
「へ!?」
そんなことがあったの!?
先週の始めごろなんて、ウチのアカリは特になんにも言ってなかったけど、(てゆーかいつもだいたい機嫌が悪いからチョッとした態度や口調に変化があってもわかんなかっただけだケド)まさかユズルくんとケンカしてたなんて。


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