投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「trip」 or Treat
【コメディ その他小説】

「trip」 or Treatの最初へ 「trip」 or Treat 6 「trip」 or Treat 8 「trip」 or Treatの最後へ

迷走-1

         ▲2▲
          ▲  迷走
         ▼▼▼



2階の廊下から、階段を駆け降りて。
マンションの近所に住んでるおじいちゃんが、小型犬と散歩しながら、ものめずらしそうに目を細めてこっちを見てる。
ハズかしい。
思わず立ち止まってしゃがみたくなっちゃうくらい。
36歳子持ちのイイオトナが、こんな。
ジュニアサイズのコスチュームをぴちぴちに食い込ませてハシャいでるだなんて。
「あ、コスプレのひとだ!!」
「なんだよ今年は気合い入ってるなあ」
うおお。
303号の野沢さんちの、魔女風の衣装を着たユウアちゃん7歳とそのパパ39歳を追い越して、階段を降りきった。

「あれ?……いま走ってった子ってどこの子達だろ?」
「きっと2かいのアカリちゃんだよ?」
「そういえば、そうかなあ……女の子ってお化粧すると、ずいぶん違って見えるんだねえ」
パパ同伴で子供会のハロウィンに参加するのだろう親子ふたりの会話が、背中越しに聞こえてくる。
「ねえパパ?」
「んン?」
「ユウアとどっちがかわいい?」
「そりゃもちろんユウアに決まってるよ?」
「わーい、やっぱりユウア、パパとケッコンしようかなー……」

もうダメ。限界。
恥ずかしくて死ねる。

いつなんどき、「アレ、アカリちゃん家のママだよ」ってなって
「えっ、あのおうちのママがかい?……そりゃあユウアの見間違いじゃないかなあ?たしかあの人30過ぎてるはずだし、いくらなんでもあんな……」
って、走り去るうしろ姿をガン見されて。
1段から2段腹にメガ進化しそうなウエストは息を止め、なんとか腹筋に力を込めて短時間は形を維持できるけど、コスチュームのズボンに無理矢理収納したアタシのお尻は、コンクリートの廊下を蹴るたびにかなり、揺れてるハズ。
お尻にピッタリ張り付いた青い生地越しに 、下着のラインもきっと、浮き出ちゃってるハズだし。
かわいいユウアちゃんと手をつないで階段を降りながら、(アノお尻、けっこうけしからんコスチュームだな……もし本当にママのほうだったらビックリだけど……露出趣味だったりするかも?……今度、児童会役員の集会の時コッソリ、聞いてみようかなぁ)
なんて、思われてるカモだし。

あわただしくカギを開け、駆け込んだ玄関先にへたり込むまでアタシ、息もできなかった。
バタン
と後ろでドアがしまって。
アタシとユズルくん、ため息がユニゾンした。

回覧板まわすときにときどき嗅いだ覚えのある、よく使ってる調味料とかの混じった匂い。
ユズルくんのおうちでもある、1階のハセガワさん家の玄関だ。


「trip」 or Treatの最初へ 「trip」 or Treat 6 「trip」 or Treat 8 「trip」 or Treatの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前