助走-2
(……?)
恐る恐るのぞき込むと、下着や体操着のジャージの山からにょっきり2本、健康的に日焼けしたナマ足が生えている。
イビキをかいて爆睡してるらしいナマ足の持ち主の顔を確かめようと、着古したアタシのショーツをつまみ上げて、またすぐにかぶせ直した。
ひと目見てすぐ、来年春には中学生になるアタシのムスメ、アカリだとわかった。
『……子供のくせに親に無断でナニ勝手にこんなもん注文してんだよッ』
『そっちこそカレシと別れたくらいでナニ飲んだくれてんだよッ……それでもオトナかよ!?』
アタシの「思い出す機能」が、昨夜のアカリとのケンカのやりとりをよみがえらせる。
『……いったい自分はいくつだと思ってんだよ!!チクビ真っ黒のクセにこのクソババア!!』
『ナニよ偉そうにこのクソガキ!!……このアタシに説教したかったら、酒が飲めるようになってからにして頂戴』
『……ナニよこんなもん……飲んでやるわよホラ!!……』
『こ、こら、チョッとアカリ!?……』
『………』
『……』
お互いの負けず嫌いがわざわいして、ののしりあいの口ゲンカが飲みくらべに発展したのだった。
……小学6年のムスメ相手に。
ぐおぉぉぉ、
ぐぅぅぅぅ。
果たして飲み比べに勝利したのはどっちだったのか、決着がつかなくて別の勝負を始めたような気もするんだけど。
ぐおぉぉぉ、
ぐぅぅぅぅ。
……ぷうぅぅぅ。
酔っていたとは言え、女子小学生に飲酒させたオロカな二日酔いの母親をあざ笑うかのように、眠ったままのムスメの呑気なオナラがアラームのように鳴り響く。
10時5分。
アタシの彼氏いない歴はめでたく12時間を迎えました。
でも、こんな最低すぎる状況に自虐的に酔いしれてる場合じゃ、なかった。