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眠り花
【ガールズ 恋愛小説】

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眠り花-1

 毎日通う電車の中、私はあの人を見る。
名前は知らない、何処に住んでいるのかも何処の駅から乗っているのかも分からない。
もちろん、あの人も私の事は何一つ分からないだろう。
まだ話した事は無い、変な人だと思われるのが怖かったから。
だけど、私はこのままでも良いと思った。美しい花は眺めるだけで良いのだ。

 今日の朝もいつも通りの電車に乗る。まだ早い時間なのであまり人は乗っていない。
あの人はいつも三両目に居るから、今日も三両目なのだろう。
腰まで伸びているかと言うほどの長い髪、いつも逢うときは制服姿で鞄を膝の上に置いているあの人。
電車に乗ったらまずあの人を捜すのが既に日課になっていた。私、もしかしてストーカーかもしれない…と思ってしまう。
「あ…。」
思わず声をあげてしまう。
あの人が珍しく寝ていた。疲れていたのだろうか、少し寝不足だったのだろうか、少し微笑ましくてかわいい…と思ってしまった。
いつも向こうで眺めていただけの私は勇気を出して隣に座ってみる…目が覚めちゃったらどうしよう。
起きない。顔を覗き込んでみたけど目が醒める気配は無かった。
…もし、このまま起きないのだったら。
ある考えが頭に浮かんだ。もし起きてしまったら私は確実に嫌われるだろう。
だけど、私は止める気は無かった。むしろ、はやる気持ちで一杯だったと思う。
…私は、今も寝息を立てているあの人の顔を見つめた。胸が高鳴り爆発してしまいそう。
唇を近付け、私はあの人に独り口付けをする。柔らかな感触を口に感じた。

…私ってヘンタイだな。
未だ寝続けている美しい花を見ながら私は思う。もう、私は花は眺めるだけではいられないだろう。


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