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浮気をされたことがあるから、浮気なんて大嫌いだし、絶対にしないって思ってた。
浮気をして来た男達の言い訳はみんながみんな、「魔が差した」とか「つい出来心で」とかの白々しいもの。
そのくせ「好きなのはお前だけ」なんて都合のいいことをいう奴らを、あたしは軽蔑の眼差しで見ていた。
だけど、彼らの白々しい言い訳が初めて理解できたような気がする。
不可抗力とは言え、彼氏じゃない男にここまで身体を許してしまい、確かにあたしはそれに抗えない快感を感じていた。
拘束され、目隠しされ、指や舌でジックリあたしを愛してくれて。
きっと、あんな気持ちいいセックスは、筒井くんとじゃ出来なかったのかも知れない。
さっきの愛撫を思い出すだけで、ヴァギナが熱くなるのがはっきりわかった。
あたしはまだ、遠藤くんと繋がっていない。
引き返すなら今だって思うけど、本能のまま、正直な気持ちを言うのなら、
ーーこのまま遠藤くんとセックスしたい。
筒井くんの事ももちろん大事だ。
だけど、今は彼の事なんて考えたくない。
ただ、本能のままに気持ちよくなりたいのだ。
俯く彼に、そっとすり寄ったあたしは、その大きな手を自分の脚の間に導いた。
「亜沙美!?」
「遠藤くん、あたし……筒井くんが好きだし、別れるつもりもない。でも、あなたともセックスしたい」
そう言うと、彼の喉仏が上下に動いた。
間近で見ると、やっぱり結構かっこいい。
元カレが浮気した時、あたしに罪悪感はないのかと詰め寄ったことがあったけど、今、自分でその答えがはっきりわかった。
こんな理性を失った状態では罪悪感もクソもない。
ただ、気持ちよくなることしか考えられなくなって、罪悪感を感じるとすれば、欲望が全て満たされて、冷静になった時に我に返るのだ。
ハロウィンは収穫を祝い、悪霊などを追い出すものだという。
だけど、あたしは完全に魔に魅入られてしまったのかもしれない。
近づいてくる遠藤くんの顔に、あたしはゆっくり目を閉じて、自分から唇を開いて彼のキスを受け入れていた。