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「所でもうすぐハロウィンだねえ」
遠藤くんが、コーヒーを一口飲んでから、やけにジジ臭い口調でしみじみ言った。
「ハロウィンかあ」
あたしがオウム返ししたところで、筒井くんもようやくスマホから手を放して顔を上げた。
「お前らはその日デートとかするの?」
遠藤くんに言われて、顔を合わせるけれど、あたし達は微妙に首を傾げるだけ。
「いや、特に考えてはいなかったけど……ねえ?」
「つまんねー、仮装して街練り歩いてくればいいじゃん」
「遠藤くん、あんなの若い子らが盛り上がってるだけじゃん。あたし達が実際街で仮装して歩いてたら笑えるでしょ」
ハロウィンのお祭り騒ぎはテレビのニュースにもなっているから、よく知っているつもりだ。
ゲームやアニメのキャラになって、ごった返す人ごみの中でどんちゃん騒ぎ。
多分本来のハロウィンの趣旨からは大きくズレているのだろうけど、日本じゃ大半の人がこんなイメージを持っているはず。
お祭りは好きだけど、そういうノリはちょっとついていけない。
「まあ、ああいうノリはそろそろ厳しいけれどさ、二人で楽しむ分にはいいんじゃないか? せっかくのイベントなんだし」
そうは言われても、ハロウィンをお祝いなんてピンとこない。
ちょっとした仮装をして「Trick or Treat?」ってすればいいの?
ハロウィン仕様のケーキでも買って二人で食べればいいの?
かぼちゃの煮つけでも作って食べればいいの? ……って、これは冬至か。
とにかく、あたしの中でそんなにメジャーじゃないイベントのハロウィンを、いきなり楽しめばと提案されても特に乗り気にもならなかった。