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まつりのあと
【女性向け 官能小説】

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1-2

猫舌の彼は、いつもコーヒーを大げさ過ぎるくらい息を吹きかけてからそっと啜る。


そんな彼をジッと見ながら、あたしもコーヒーを一口飲んだ。


神経質そうなこけた頬。スッと通った鼻筋。薄い唇。一歩間違えればモヤシと呼ばれかねない細身の身体。


あたしの彼氏でもある筒井くんは、見た目・中身共々典型的な草食系男子であった。


ちなみにあたしは、こういうタイプと付き合うのが実は初めて。


というのも、歴代の付き合ったオトコはみんな男っぽい肉食系男子だったから。


元々はあたしはそういうタイプが好きだったのだ。


だけど、あたしの見る目がないのか、付き合うオトコは浮気性の奴ばかり。


筒井くんの前に付き合ってたオトコも例にもれずひどい浮気性で、特にコイツには、別れに至るまでに心身ともにボロボロにさせられた過去がある。


そんな恋愛ばかりで疲弊しきったあたしが、次は穏やかな恋がいいと思うのは至極当然のことで。


だから、次こそ失敗しない為にあたしが目を付けたのが草食系男子だった。


今まで肉食系のガツガツした男ばかり選んで失敗したのだから、今度は正反対のタイプと付き合えば幸せになれると、そういう考えに行き着いたのだ。


そしてその結果、たまたま同期で入社したこの筒井くんが、あたしのお眼鏡にかなったのである。


ターゲットを決めたら、後は積極的にアプローチ。


もう一人の同期に協力を仰ぎ、デートに誘ったり、こまめにLINEを送ってみたり。


そんな、やや強引なアプローチをしたのも、草食系男子は決して自分から行動しないと睨んでいたから。


そして努力は実を結び、あたしと筒井くんはお付き合いをすることになったわけだけど、草食系男子との恋はまあ平和で平和で、本当に穏やかな恋だった。


元カレ達との恋がジェットコースターなら、筒井くんとの恋はメリーゴーランドって所か。


それもそのはず、筒井くんはあまり恋愛……というか女に興味のない人種だったからである。


趣味はゲーム。人ごみは嫌い。食べ物も興味がない。


……ついでに言うと、エッチもさほど興味がない。


それでも恋人同士だから、それなりに身体は重ねて来たけれど、どうも内容が薄いのだ。


ちょっと触れて、少しだけ興奮して、吐き出して、おしまい。


穏やかな恋を望んだのはあたしだし、筒井くんは淡白ながらもとても優しく誠実だ。


でも、こう淡白だとどうしても穏やかな恋が単なるぬるま湯に浸かっている恋のような気がしてきて、これでいいのかな、なんて思うことがある。


ーーたまには盛り上がりが欲しいんだけどな。


あたしが彼を見つめているというのに、筒井くんはコーヒーを一口飲んでデスクの脇にそれを置くや再びスマホをいじり始めていた。




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