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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♠愛しのあの娘♠-3

どうやら、父親の不倫を知っていたのは、松本だけではなかったのだ。


父親の不倫に気付いていた松本のお母さんも、ずっと自分が見て見ぬフリをしていればうまくやって行けると思ってて、松本同様に自分一人で抱え込んでいたらしい。


だが、もう無理だと思ったのが、松本の誕生日のお祝いを打診した時の事だったそうな。


松本はもう、家族でお祝いという年頃でもないとわかっていたけれど、せめて娘の誕生日くらいは家にいて欲しいと、母親としての思いがあったらしい。


だが、父親は松本の誕生日などすっかり忘れて、出張と嘘を吐いた。


自分が大事にされないならまだしも、娘の事まで蔑ろにした事が決め手となり、離婚を決意したそうだ。


父親は、松本に不倫がバレたその時点で女と別れてきたそうだが、覆水盆に返らず。


すっかり父親に見切りをつけた松本母娘は、いかに有利に離婚出来るか弁護士をつけてそのままお母さんの実家に帰ったらしい。


父親は、離婚しないとごねているらしいが、お母さんはずっと前から証拠を集めており、離婚してくれないなら調停に持ち込むつもりらしい。


当の松本も、あの現場に居合わせたことで、父親に対する執着心が一気に引いてしまい、今では離婚を決意するお母さんを応援するらしい。


「松本なら、大丈夫っす」


「天野くん……」


ニカッと笑う俺を、未だ心配そうに見る古川さん。


そんな彼女に俺は一言。


「俺が支えます」


そうしてステージに目を移せば、いつの間にかあのロングヘアがどんどん天童さんの手によって変化していく松本の姿。


俺はもちろん松本を支えていくつもりだけど、アイツ自身も変わろうとしている。


このコンテストに出場する事は、松本の決意の表れを具現化したようなものでもあった。


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