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ママはサキュバス
【ファンタジー 官能小説】

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第二話:ママの元婚約者が現れた-6

「この、バカ息子がぁぁぁぁ!!」

 その時、室内に何者かの一喝が轟いたの・・・

 私とママは思わず驚いて室内を見渡し、早漏おじさんは声を聞いた瞬間、顔を真っ青にしながらブルブル震えだしました。

「そ、その声・・・パ、パピー!?」

「貴様如きに、パピーと呼ばれる筋合いは無いぞぉぉ!」

 再び室内に誰かの一喝が轟き、早漏おじさんは無様に怯えて、

「ヒィィィ!?パピー、ゴメンなさぁぁい!」

 早漏おじさんは、その場で頭を抱えるようにブルブル震え続けて居ると、室内の空間が歪み、ちょっとダンディなおじ様が姿を現したの・・・

 白髪交じりの髪をし、筋骨隆々とした肉体美、ママと同じように背中から蝙蝠の様な巨大な翼を生やして、威風堂々と立つその姿に、思わず私も見惚れちゃいました。ダンディなおじ様は、深々とママと私に頭を下げ、

「マヤ姫、我がバカ息子が迷惑掛けた・・・すまぬ!」

「おじ様!ご無沙汰していますわ・・・その節は、逃げ出してゴメンなさい」

 今度はママが、ダンディなおじ様に頭を下げて詫びたんだけど、おじ様は右手を振って、

「いやいや、こんなバカ息子では、マヤ姫が逃げ出すのも無理は無い・・・そのバカ息子が持つそなたの母、サキュバスの女王リリスの許可証も・・・実は偽造したものじゃ、心配せんでもよいぞ」

「エッ!?そ、そうですか、良かった・・・おじ様、この子は私と人間の男性との間に生まれた娘で、千聖って言います。千聖、この方はインキュバスの王様よ」

「王様!?は、初めまして・・・娘の千聖です」

「ほう、若い頃のマヤ姫にそっくりだのぅ・・・」

 インキュバスの王様は、私を見て目を細めて笑みを浮かべてくれました。王様って言うから、もっと怖い人かと思っちゃった。

「でも、お母様が許可してないと知って安心したわぁ・・・」

 ママは、おじ様の言葉を聞いて、心から安堵したような表情を浮かべました。王様は、ちょっと意地悪そうな表情でママを見ると、

「だが、リリスが未だにそなたの事を怒って居るのは、事実じゃがなぁ?」

「ウッ!?やっぱり・・・」

 ママは、お婆ちゃんがまだ怒っていると聞くと、ちょっと緊張した表情で固まりました。

「一度娘を連れて、リリスに顔を見せたらどうだ?何なら、バカ息子が迷惑を掛けた詫びに、わしが仲介に入ってやるぞ?」

「ありがとう、おじ様・・・何れ時が来れば、私の方からお母様を訪ねてみますわ」

「そうか・・・さてニック・・・貴様はこの先百年、他のインキュバス達と共に、みっちり修業し直させるから、そのつもりで居るが良い!」

 王様に睨み付けられ、早漏おじさんはしょげ返りながら小さく頷き、

「ハ、ハイ・・・」

「フフフ、修行頑張ってねぇ!これ、返すわ」

 ママが笑いながら、早漏おじさんに進化の宝玉を返すと、早漏おじさんは涙目になりながら、

「こ、こんな物ぉぉぉ!」

 癇癪を起した早漏おじさんは、開いていた窓から、外目掛けて進化の宝玉を投げ捨てました。それを見た王様に頭を殴られ、早漏おじさんはワンワン泣き出しました。私は、ベランダに出て、双眼鏡で下に人が居ないか確認すると、早漏おじさんが連れて来た大きな人が、進化の宝玉を不思議そうに手に持って眺めると、何と大きく口を開けて飲み込んじゃったんです。

(ウワァ・・・)

 私は思わず引いてしまい、慌てて室内に戻りました。ちょうど室内では、インキュバスの王様が、早漏おじさんを小脇に抱えて、魔界へと帰る所でした。

「マヤ姫よ、そなた魔界から逃げる時、使い魔を連れて行かなかったようだのぅ?」

「エエ、慌てて逃げ出したものだから・・・」

「ママ、使い魔って何!?」

「ああ、使い魔って言うのは、ようは召使いの様な者ね」

 私はママの説明を聞き、ママは確かにサキュバスの女王の娘何だと実感しました。召使いを持つ何て、ママ凄いって思っちゃいました。

「では、これをマヤ姫に譲ろう・・・使い魔のキャリィじゃ、この世界に置くなら、猫の姿で良いだろう」

「キャリィです・・・マヤ様、どうかよろしく」

「ウワァァァ!可愛い!!」

「ありがとニャ」

 王様がママにくれた使い魔は、見る見る茶色い猫の姿に変化すると、人間の言葉を喋ってママに挨拶したの、猫好きな私は、思わず興奮しちゃいました。ママはそんな私に目を細め、王様に頭を下げると、

「まぁ・・・おじ様、色々ありがとうございます」

「何、ではさらばだ!」

 インキュバスの王様は、息子の早漏おじさんを連れて、魔界へと帰って行きました。私はハッと我に返り、

「アッ!?あの早漏おじさん、一緒に連れて来た人置いて行っちゃった」

「エッ!?他にも誰か居たの?」

「ウン!確か・・・オークって言ってた」

 私がオークの名を出すと、見る見るママの表情が強張って行きました。私は不思議そうに首を傾げ、

「ママ、どうしたの!?」

「ウン・・・オークは、主従契約を結んだ主の傍ではおとなしいんだけど、ニックが魔界に帰ったとなると・・・私、ちょっとその辺調べて来るから、千聖は明日から試験でしょう?勉強してて頂戴・・・キャリィ、早速だけど、オーク探しを手伝って」

「ハイですニャァ!」

 ママとキャリィは、慌ててオークを探しに外に出ましたが、オークの姿は見当たらなかったそうです。

 ですが数日後、あの早漏おじさんの忘れて行ったオークのせいで、私の身に、今後の人生を大きく変える出来事が起こるとは、この時の私は全く想像していませんでした・・・


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