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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♥隣にいてくれる男♥-7







帰り道、すぐ駅に向かうことはお互い考えていなかったらしい。


スプレンディード・ガーデン・ホテルは駅前にはあるけれど、ちょっと裏を通れば、大きな公園につながるイチョウの並木道に出られる。


あたし達は並木道を黙って歩いていた。


この暑さのせいか、歩いている人の姿もまばらで、あたしは黙って少し先を歩く天野くんの背中を見つめていた。


こうして見ると、やっぱり天野くんは背が高い。


小野寺くんやパパも背が高い人だけど、天野くんは肩幅もしっかりしているせいか、彼らよりも大きく見える。


いや、大きく見えるのは、目の錯覚だけじゃないかも。


パパ達に、怒鳴ってくれた天野くん。


途中で声を詰まらせていたけれど、逆にそれが救われた。


あたしのために泣いてくれるって。あたしを思って怒鳴ってくれるって。


あの人はとりあえず謝罪してきたけれど、だからと言ってすぐそれを受け入れる気には到底なれなかった。


ママに言うべきか。言わないべきか。


あたしの家庭は、これから先はどうなるかわからない。


その事を考えると、胃がシクシク痛んでくるっていうのに。


少し背中を丸めて、時折ため息をついている天野くんを見ていると、なぜかクス、と可笑しくなってくる。


さっきまであんな修羅場で死にたいくらい辛い思いをしてたってのに。


不思議、天野くんがそばにいてくれるとこんなにも落ち着いてくる。


「……もう少しいくとコンビニがあるっぽいから、アイスでも食ってくか」


後ろを振り返らないままボソッと言う彼は、あたしの返事を待つように、少しだけ歩みを緩めた。


あたし、だんだんわかってきた。


彼はいつもこんな風に不器用な優しさをあたしに与えてくれてたこと。


そして、自分の気持ち。


あたしはそれに応えるように彼の隣に並ぶと、天野くんはなぜか明後日の方向を向いてしまった。


「なんで、顔合わせないの? もしかして、さっき泣いちゃったこと気にして?」


「…………」


図星なのだろう。言葉を発しなくとも真っ赤になった耳を見てあたしはクスリと笑った。


全然関係のないあたしのことで、一緒に泣いてくれていた天野くん。


きっと、あたしの前で泣いたことが恥ずかしくてたまらないんだね。


頑としてこちらを見ようとしない彼を、なんとか振り向かせてみたくなったあたしは、そっと自分の手を天野くんのそれに重ねてみた。





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