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『やきもちと約束と』
【青春 恋愛小説】

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『やきもちと約束と』-4

相手との実力はほぼ互角、予想以上に白熱した試合になっていた。だが、ついに相手のマッチポイント。俺は絶対絶命のピンチだった。
(足…痛ぇ…。)
試合中に足が痙攣してしまっていたのだ。応援席をちらりと見る。新藤は無理をするなと目で言っている。朱美ちゃんも心配そうな表情だ。だけど俺はやめるつもりはない。
(へっ、約束したんだ。こんなところであきらめられるかよ。勝負はこれからだ。)
俺はサーブを打つためにボールを空高くに放りあげ…
「でりゃあ!」
おもいきり打ち出した。相手はそのボールを捉えると、反対に向かって打ち返す。ボールはサイドラインギリギリに向かって飛んだ。それは俺の今の足で間に合うかギリギリの距離。
(間に合えッ!)
俺は足の痛みに耐えながら、ボールに向かって全力で飛びこんだ…。

俺は今学校近くの公園のベンチに座っている。と突然声がかかった。
「せ〜んぱいッ♪」
声の主に申し訳なくて俺はうつ向いたまま謝る。
「わりぃな、マネージャー。約束、守れなかった。」
結局、あの試合で俺は負けてしまい、俺たちが全国大会に出場することはなかった。
「あれはもういいんです。最後に先輩の最高の試合、見せてもらいましたから。」
そう、あれは俺の最後の試合。そして俺と彼女の部員とマネージャーという関係も…もう終わる。
「あーあ、これで引退かぁ…。なんか、あっけねぇなぁ。」
「そうですね。ちょっと、寂しいですね。」
「今日からしがない受験生かぁ…。」
「クス、勉強が辛くなったら遊びに来てもいいですよ?」
「そうだな、考えておこう。」
そこでしばらく会話が途切れる。
「…先輩、ここで先輩のこと叩いたの、ちゃんと謝ってなかったですね。…あのときはごめんなさい。」
そう言って朱美ちゃんは頭を下げた。
「あ、謝らないでくれよ。もとはといえば俺のつまんないやきもちのせいなんだし。」
「…やきもち?誰にやきもち妬いてたんですか?」
朱美ちゃんが怪訝な顔をして俺の顔をのぞきこんでくる。しまった…。
「え?それは…その…ええと…」
答えに窮している俺を見て、朱美ちゃんはため息をつく。
「やっぱり、あのときの話、聞いてたんですね?あれは誤解です。私が好きなのは新藤先輩じゃありません。」
朱美ちゃんはそこで言葉を切ると、一度大きく息を吸って言った。
「…私が好きなのは、桐沢先輩です…。」
「…えっ……マジ?」
「はい。」
「ホントにホント?」
「ホントにホントです。」
じゃあ、今までの全部俺の勘違い?そう考えたらおかしくてしょうがなかった。
「ぷっ、くくく、あははは!」
「ど、どうしたんですか!?」
朱美ちゃんは突然笑いだした俺にうろたえている。
「だ、だってさ、勘違いで新藤にやきもち妬いて、ビンタまでされたんだぜ?俺バカみたいじゃん。」
そう説明するとまた俺は笑いだした。
「ふふ、それもそうですね。」
朱美ちゃんもそういうと笑いだす。そうして二人でひとしきり笑い終えると、彼女は上目使いで俺の顔をのぞきこんで聞いてきた。
「で、先輩。返事は聞かせてもらえないんですか?」
「言わなくてもわかってるんだろ?」
気持ちがバレてるのに、いまさら言うのもなんかてれくさい。しかし…
「ダメです!ちゃんと先輩の口からも聞かせてください!」
朱美ちゃんは許してくれない。
「…どうしても?」
「どうしてもです!」
期待に満ちた表情で俺を見つめている。参ったな…。俺は頭をかいてため息をつくと一度深呼吸。…よし、言おう。


「俺も…朱美ちゃんのこと…好き…。」


〜終〜


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