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スイッチ、オン 〜 The actress on through the lens
【その他 官能小説】

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第一章の1 初めてなのに-2

 さて、今日はそろそろアガリか。まだ昼の三時前だ。その辺ブラついて帰ろう。
 「お先でーす。」
 「お疲れ様ー。」
 俺はファッションにはあまり興味がないが、靴にだけは少々のこだわりがある。靴には機能的装備の側面が強いからだ。久しぶりにDEFマートに寄ってみよう。
 学生の頃は通学路だったこともあって毎日のように行っていた。しかし最近はなんとなく足が遠のいている。自分の職場が近いせいもあるかもしれない。
 馴染みの看板が見えてきた。学生の頃の弾んだ気持が少し蘇った。
 なんとなく雰囲気が変わったような気がする。店長さん、代わったんだろうか。
 ほう、今シーズンはこういうのを売りたいのか、なんて考えながらのんびり歩いていると、視線を感じた。ん?なんだか見覚えのある…あ。
 「先程はありがとうございました。」
 「あ、どうも。こちらで働かれてたんですね。」
 「ええ、休憩時間に寄ってみたんです。」
 スマホの本を探していた人だ。改めて見てもやっぱり可愛い。
 いくつか気になった靴があったので、試着させてもらった。
 「これ、サイズあります?EUの45。」
 「あ、あると思います。少々お待ち下さい。」
 箱が幾つか積み重ねられた所を腰をかがめて探し始めた彼女は、俺にお尻を付き出す形になった。カジュアルな赤いスカートに、下着の線が浮かび上がっている。フリルの模様までクッキリと分かるぐらいに。薄い生地だとはいえ、それだけはっきりと見えてしまうということは、かなり強い力が下着をスカートに押し付けているということだろう。それはつまり、お尻の圧力…。目が離せなくなった。
 「ありましたよ。」
 と彼女が振り返った。見ていたことがバレなかったかと動揺してしまった。
 俺は椅子に座り、足を入れてヒモを締めながら言った。
 「あ、そうだ、さっきは言い忘れましたけど、実際に触ってみるとなんとなくどっちのスマホが自分の希望に近いとか分かってくるかもしれませんよ。」
 「実際に?」
 「今お使いのケータイってアーウーバンクですよね。店頭で実物触れますよ。ここでこうして試着してみるような感じですね。」
 「そうなんですか。でも…」
 少し眉根をよせ、困ったような顔になった。
 「どうしました?」
 「なんだか緊張しそうで。」
 やっぱり少し内気なんだ。
 「ああ、そうですねえ、美容室とか、病院とか。そして、ケータイショップ。なんだか緊張しますよね。」
 「そう!そうなんですよ。私だけじゃないんですね。なんだかちょっと気持がラクになりました。」
 彼女の眉根が開き、顔に明るさが広がった。
 俺は思い切って言ってみた。
 「もしよかったら…なんですけど、僕のヤンドロイド、少し触ってみます?いや、むしろ緊張しちゃうかな、知らない人のなんて。」
 彼女は右手の人差し指をあごに当て、少し首をかしげた。
 「…それが、不思議なんですよ。初めて会ったはずなのに、そんな気がしないんです。私、男の人と話すの、とても疲れてしまう事が多いんですけど、あなたとはぜんぜんそんなことなくて。」
 「うーん、実は僕もなんですよ。どこかでお会いしたことがあるのかなあ。」
 「なんでしょうねえ。」
 靴のフィット具合を見るために彼女が無造作にしゃがんだ。おお、スカートの中が…え?なんだこれ。スカンツとかいうやつか?見た目はスカートだが、実は裾の大きく広がったズボン。まあ、白い太ももはバッチリ見えているから良しとするべきか。でもなあ。
 ん?よく見るとスカンツの股の部分がギュ、っと下着に喰い込んでいるではないか!痛くないのか、ってぐらいにかなり深く。どうすれば目を逸らせるというのか。思わず無言で鑑賞してしまっている俺の様子を別の意味に捉えた彼女が訊いてきた。
 「あの、他のサイズお試しになりますか?」
 首をかしげて見上げてくるやや幼い印象の顔と、その下の方に見えているオンナの魅惑のミスマッチがたまらない。
 「あ、あー、いえ、これ下さい。」
 「ありがとうございます。レジの方へお願いします。」
 「すみません、お仕事中にいろいろ話しかけてしまって。」
 「いえいえ、私もお話したかったことですから。あのー…、」
 「はい?」
 「私もうアガリなんですけど、この後ってお時間いただけませんか?」
 「お時間いただけますよ。」
 「え?えー、なんですか、それ。おもしろい!」
 「友人によく言われるんですよ、お前、おもしろおかしいやつだな、って。でも、これがウケたの初めてかも。」
 「じゃあ私が変わり者だっていうんですかー?。」
 「変わり者なんでしょうね。」
 「ひどーい。あ、子供の頃に同じようなこと言う男の子が居ましたよ。」
 「へえ、僕の他にもハイセンスな人が居るんですね。」
 「ハイセンス…かどうかはまた別かもしれませんけど。」
 「あはは。えっと、どうしましょうね、そのへんのカフェとか?」
 「いいんですか?よろしくお願いします。」
 「よろしくお願いされます。」
 彼女が引継ぎを終えて出て来るのを待って、店から少し離れたところにあるカフェに入った。
 最初は向かい合わせに座って説明をしていたのだが、実際に触ってもらうのに不便だったので、並んで座り直した。
 ルリアさんはなかなか覚えがいい。すぐに基本的な操作とコツのようなものを掴んだ。彼女にはヤンドロイドが合っているようだ。
 その時点で帰っても良かったのだが、二人共席を立つ感じにならなくて、けっこう長い時間おしゃべりしてしまった。


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