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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♥偏見を持つ男♥-6

小夜さんが休憩に入って、空気がガラッと変わった。


例えるのなら、ほんのりピンクの和やかムードから、張り詰めたモノトーンの空気って感じ。


天野くんが休憩に入る前は、いつも通りあたしが彼をおちょくって笑う程の余裕があったのに、それができないほど彼はなぜか、険しい顔をしていた。


しかも、こんな時に限ってお客さんがぜーんぜん来ない……。


フロア内を見渡しても、帰りそうなお客さんの姿もなく、ほとんどが食事をしていたり、お喋りに花を咲かせているばかりで、動きがまるでない。


「松本、このアイスコーヒー補充するぞ」


「あ、うん」


手持ち無沙汰になっていた天野くんは、小夜さんがさっき作ってくれたアイスコーヒーの寸胴鍋を指差した。


「…………」


ディスペンサーの蓋を開け、アイスコーヒーを注ぐ彼の、筋肉質な二の腕がチラリと目に入る。


寸胴鍋でたっぷり作るアイスコーヒーは、結構な重量だし、加えてディスペンサーの上部から注がなくていけないので、踏み台は必須。


でも背の高い天野くんは、踏み台も使わず、涼しい顔して寸胴鍋を持っていて、やっぱり男の子なんだなあと、妙に感心してしまう。


うん、やっぱり見た目はそんなに悪くない。


硬くて短い髪の毛がツンツンしていて、やや太めの眉に涼しげな瞳。


告白は断ったし、その事に対して後悔はない。


むしろ、断ってからの方が関係がよくなった気がするんだ。


そもそも天野くんは、告白してくれる前の『いい子ぶってた』あたしを好きになったわけで。


告白を断った以上、本当の(天野くん曰く性悪女な)あたしで接した方が、きっと天野くんも幻滅するだろうし、あたしも気が楽になると思ったんだ。


案の定、あたしに幻滅した天野くんは、憎まれ口を叩くようになったし、あたしもあたしで気を使わなくていいから、おちょくったりもできる。


だから、天野くんと一緒ですんごいリラックスできる……と思ってたのに、何でか天野くんの険しい顔に、あたしは柄にもなく萎縮していた。



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