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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♠狙われた女♠-4

確かに今日の店の中はいつもよりも客足がまばらだった。


古川さんも、点検という店頭とトイレの清掃作業にスムーズに入れたようで、その姿はフロアに無かった。


だから、小野寺くんと話をするのには絶好のチャンスなのだが、唇が氷のように固まってしまって動かない。


クソ、今しかねえだろ、俺! なんで口を開かねえんだよ!


自分の意思と違う反応をする身体をもどかしく思い、一人焦っていると、隣からフッと息が漏れる音がした。


そっと横を見ると、ニッコリ笑う小野寺くん。


だけど、その笑みは何か言いたげな意味深なもので、俺は慌てて目を逸らした。


「どうした? なんか今日ぎこちないじゃん」


「あっと……、ええと……そんなことない……と思うけど」


「いやいや、今日の天野くんは変だよ? チラチラこっちを見ては目を逸らしてるし」


ヤベ、バレてる。


ギクリと身体が強張って、直立不動になってしまった俺に、小野寺くんはついにクスクス笑いながら、


「松本さんのことで何か聞きたいんでしょ?」


と言った。


ビックリして小野寺くんの方を見ると、大きくて形のいい瞳を緩やかに曲げてこちらを見つめていた。


美形がニコニコ笑うその表情は、爽やかそのもので、漫画なんかでよくありそうなキラキラしたものが舞っているような気がした。


うはー、マジかっこいいわ、この人は。


小野寺くんがバイトに入ってからは女性客が増えたとの噂がある。


俺も同時期にスウィングに入ったから、女性客が増えたのは俺のこともあるんではと冗談っぽく言ったことがあるが、バイトの女性陣からは『それは絶対無い!』と少しキレられながら全否定された苦い思い出がある。


結局それは小野寺くん効果ということでその場は落ち着いたけれど。


この端正な顔を見てると、その噂はあながち間違いではなさそうである。




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