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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♠狙われた女♠-14

しかし、男は、


「そう」


とだけ言うとあっさりその場を離れた。


てっきり松本を口説こうとしていたのかと思った俺は胸を撫で下ろし、男の背中を見つめた。


彼は、スタッフルームのそばにある、二人がけの小さな丸テーブル席に着くと、その長い脚を投げ出すように腰かけた。


「何だ、アイツ……」


「小野寺くんの友達でしょう? 変なとこなんてないわよ」


「でも、小野寺くんの友達なら、なんでオメーに声掛けんだよ」


「さあ……。あたしが可愛いからじゃない?」


そうやっておどける彼女は、さっきのやり取りなんて意にも介さないって感じだった。


だが、俺だけが妙に引っかかってる。


きっと単なるナンパなら、俺も面白くないながらもここまで気にしなかっただろう。


だけど、あの小野寺くんの知り合いなんだ。


そいつが、松本に声を掛けた。


たったそれだけのことなのに、喉に引っかかった小骨のようにスッキリしなかった。


「ほら、天野くん。そろそろ休憩行ってきなよ」


釈然としない俺とは対照的に、松本はあっけらかんと俺に休憩を促した。


そうだ、休憩入んなきゃ。


カウンターを出たところで、仕事上がりの小野寺くんがさっきの男のところで話をしている所が目に入った。


彼らが話している脇を通らないと、スタッフルームには入れない。


小野寺くんは男と話すのに夢中で俺が近づいているのも気付かないようだった。


うーむ、挨拶すべきかそっとしておくべきか。


親しい間柄ならば、一声かけてからスタッフルームに入るってわかるけど、小野寺くんは松本の身体を弄ぶにっくき遊び人だから、なるべく話をしたくない。


そんな個人的な感情で、俺が出した結論は、存在を消してコッソリスタッフルームに引っ込む、というものだった。


幸い店の中はそこそこ混んで来て、ザワザワ騒がしい。


この騒がしさに紛れたら、小野寺くん達には俺が脇を通ることに気付かないだろう。


そう思って、気持ち静かに足を踏み出した、その時だった。


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