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【SM 官能小説】

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宴 〜肛虐〜-5

その日、草薙家の本家と分家の立場を利用して、胤真は自宅に智佳を呼び寄せた。
それが、智佳の警戒心を呼び起こす。
「ちょっと智佳!準備出来たの!?」
絶叫に近い母親の呼び声など知らん顔で、智佳はタロットカードを操っていた。
何だか、果てしなく嫌な予感がする。
タロット占いは趣味の一環だが、こんな時には無性に頼りたかった。
カードをシャッフルし、並べ……開く。

デビル・正位置
デス・正位置
タワー・正位置

未来を暗示するキーカードは、いずれも悲観的な示唆を出した。
「……何が起きるか知らないし……なにより、行きたくねぇ」
断りの口実を考え出そうと頭を捻り出した智佳の首根っこを、母親が引っ掴む。
「ご本家のお坊ちゃまが直々にあんたをお呼びなんだよ!あんた、親に恥をかかせたいの!?」
「ぐえええ……っ」
酸欠に陥るまで首を締められそうになり、智佳は呻いた。
草薙家では思いきり影の薄い父は、そんな母子のやりとりを苦笑いして見ているしかない。
「分かったわよ……行けばいいんでしょ?行けば」
げほげほと咳込みながら、智佳は言う。
こうして智佳の両親は、そうとは知らずに二度と戻れない道へ向かって娘を放り出した。


「お、ようやく来たか」
重い足取りで草薙本家まで赴き、使用人に胤真への面会の旨を告げる。
すぐに通された胤真の部屋で、当人は茶など飲みながら悠然と構えて智佳を待っていた。
そして、この言葉。
ただでさえ友好的とは言えない関係なのだから、智佳は不機嫌になった。
「何でせっかくの休日に、私が草薙本家まで来なきゃならないのよ」
そこで胤真の向かいに座って開口一番、智佳は文句を言う。
「俺が行けば良かったか?」
胤真のセリフに、智佳はそっぽを向いた。
「さあね。それで、何の用があって呼んだの?」
「そうつんけんするな。世の中にはかけつけ三杯って言葉もある。まずは、茶でも飲めよ」
胤真は伏せてあった湯飲み茶碗に手ずから茶を淹れ、智佳の方へ差し出す。
「……」
疑って手に取ろうとしない智佳に、胤真は笑いながら言った。
「茶なんかに怪しいモン混ぜるわけないだろ?」
そう言われ、智佳は渋々……本当に渋々と茶碗を手に取る。
そして、お義理で一口啜った。
「さて、呼んだ理由だけど……」
「あっ……?」
智佳は思わず呻く。

かくんっ……

いきなり、体の力が抜けたのだ。
「胤真っ……騙しっ……!?」
「嘘は言ってねえよ」
胤真はにやにやと笑っている。
「茶碗に怪しい薬を塗ったけど、茶には入れてないもんな。大丈夫、軽〜く体が麻痺するだけ。そのままなら、それほど経たないうちに痺れは消える」
「あ……んたっ……!」
「お前が俺に忠誠を誓ってくれないのなら……俺がお前を、忠誠を誓うように変えてやればいいだけの話さ」
胤真は智佳に近付き……首筋に、一撃を加えた。
「少しの間、眠っててもらうよ」


そして、智佳は目を覚ます。
全面石造りの、どこかの地下室らしい場所。
なのにどこかから光が差し込んでいるらしく、部屋中を過不足なく見渡せた。
窓はなく、壁にいくつもかけられた燃えている蝋燭が、いかにもそれっぽい雰囲気を醸し出す。
蝋燭にしては妙に明るいし炎が揺らめいてもいないので、もしかすると蝋燭をかたどったランプかも知れなかったが。
そこら中に散らばった、使用目的など定かではない器具の数々。
智佳は、体を動かしてみる。

がぢゃんっ

予想通り、手足は頑丈な鎖で固定されていた。
両の掌は頭上で組まされ、両足は大きくM字に……いや、横から見るとZになるように開かされ、膝にかけられた鎖で吊されている。
足の筋肉が疲労しないよう、ふくらはぎと足首に支えが当てられていた。
体そのものは、寝台のようなものに固定されている。
既に全裸にされていたが、もはや恥ずかしいとも思えなかった。


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