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あの夏の日のひぐらし
【姉弟相姦 官能小説】

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第四章 たおる-1

 「あれ、姉さんもう帰ってるんだ。」
 玄関には上品なブラウンのパンプスがきちんと揃えて置かれている。今日は夜シフトだって言ってたけど、俺の聞き間違いだったのかな。俺も予定していた資材の入荷が遅れて、午後の仕事が無くなって予定外に早く帰ってきちゃったんだけど。
 姉さんは看護大を出て公立の総合病院の看護師をしている。昼夜問わずの仕事のため、勤務はシフト制で不規則だ。それは土日祝も変わらない。特に、二十代半ばにして副師長に抜擢されてからは勤務時間が増え、そのため姉弟が自宅で一緒に過ごす時間はあまり多くはない。
 今日は思いがけず一緒に晩御飯が食べれそうだ。とりあえず帰宅を告げようと二階に上がり、姉さんの部屋の前に立った。
 「ん?」
 少し開いたドアの向こうから何か声が聞こえてくる。
 「あ…ああ、はあぁ…。」
 こ、これってアレの声だよな。動画やテレビじゃない。間違いなく姉さんの声だ。
 いけない、いけない、見てはいけないやつだとと思いつつ、ついドアの隙間から覗いてしまった。
 「ん…んん…んふぅ…。」
 ベッドの上に仰向けに寝ている姉さんが、眉間に皺を寄せ、きつく目を閉じて端正な顔を歪めている。その左手は胸を這い回り、右手はショートパンツの中で蠢いている。
 「うう…。」
 俺だってもちろんする。姉さんがしたって何もおかしくない。正常な若い女性だと言えるだろう。しかし、こうもストレートに目の当たりにしてしまうと、やはり動揺は抑えきれない。実の姉が悦びの声を漏らしながら乱れている姿に遭遇してしまったのだから。
 「あ、ああ、ああ!」
 姉さんの息がどんどん荒くなり、手の動きが激しさを増していく。
 「あう、あう、ああーーー!」
 やっぱり見なかったことにしよう。俺はドアから離れようとした。その時、緊張のせいかつい力が入りすぎ、つま先をドアにぶつけてしまった。
 姉さんの手が止まった。固く閉じられていた瞼が開かれ、俺と目が合った。胸を這っていた左手は降ろされ、右手はショートパンツから引き抜かれた。
 「ご、ごめん!見てないから、俺、見てないから大丈夫だよ。」
 俺は急いで部屋から離れようとした。
 「待って!」
 呼び止められた。盗み見していたことを怒られるのだろう。いくら温厚な姉さんでも、こればっかりは許せないはずだ。他人に最も見られたくない行為を覗かれた。しかも相手は実の弟だ。
 俺は覚悟を決め、振り返った。
 「入って。」
 言われるままに姉さんの部屋に入ると、彼女はベッドの淵に腰を下ろしていた。
 「隣、おいでよ。」
 「うん…。」
 並んで座った。
 「…いま私がしてたことが何なのか、もちろん分かってるよね?」
 「あ、うん。ごめん。」
 姉さんは大きなため息をひとつついた。
 「怒ってるんじゃないの。わざとじゃないのは分かってるから。ただ…。」
 「何?」
 「恥ずかしいの。一応女だからね。弟の君からすれば姉でしかないのは分かってるけど。」
 「そんなことないよ、姉さんは女の人としてもすごく素敵だよ。」
 姉さんは微笑みを浮かべた。
 「それ、何かフクザツな気分だな、ふふ。嬉しいんだけど、そうであればあるほど、あなたの前では女であってはいけないんだな、って。だって私たちは…」
 「姉弟、なんだね。」
 「そう。」
 二人は伏し目がちに微笑みあい、フウ、っと息をついた。
 「あーあ、見られちゃったか。病院では清楚で優しい看護師、家では素敵なお姉さんであろうと思ってやってきたのに。あんな姿見られちゃったら、台無しだね。」
 「ごめん。」
 「ううん、何も謝ることしてないよ。むしろ、何だか吹っ切れたというか。もっと肩の力抜いていられるようになった気がする。」
 姉さんはそう言うが、恥ずかしい思いをさせてしまったのは事実だ。
 「あ、あのね。」
 「何?」
 「お、俺もして見せようか?」
 「はあ?何言ってるのよ。」
 「だってさ、姉さんにだけ恥ずかしい思いをさせたままになんて、したくないよ。」
 「ヘンタイ。見たくないよ、そんなの。」
 彼女の視線が俺の股間に注がれた。
 「だよね…。」
 姉さんが目を伏せて呟いた。
 「ウソ。ホントは…見たい。」
 「え…。」
 「確かに私たちは姉弟だけど、生物学的には女と男。それも、最も間近に居る異性。もしも心に痛みを感じてしまったら…。こんなに辛いことはないと思わない?だって、結ばれてはいけないんだから。」
 「姉さん…。」
 「ま、私が一方的に思ってることだけどね、へへ。今の、忘れて。」
 俺は姉さんの手を掴み、自分の固くなった部分に乗せた。
 「ちょっと…何するの!」
 「見たいって思ってくれてるんだろ?俺は姉さんに見られたい。」
 「ば、ばか言わないでよ。ダメでしょ、それ。」
 そう言いながらも姉さんは手をどけようとはしない。
 「ねえ、握ってよ。」
 二人はしばらく見つめあった。やがて、姉さんの手に力がこもり始めた。
 「…ずいぶん大きくなったんだね。」
 「姉さんだって。ペチャンコだった胸が、そんなに膨らんでるじゃないか。」
 姉さんは黙って俺の手を握り、自分の胸に重ねた。
 「そうだね。私たち、いつの間に大人になったんだろう。」
 カナカナカナ…。外でひぐらしが鳴いている。


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