第三章 たにま-2
「じゃあ他のオカズくれ。」
「いいのか?ここに居る間は出来ないぞ。その足じゃ自分で歩いてトイレに行けないし、その場で出したら体拭いてもらったりするときに絶対バレるし、ティッシュに包んでもごみ箱に手が届かないだろ?オカズだけあっても辛いんじゃないか。」
「そうか…じゃ、オカズはいらない。」
「だろ?」
「でも、オマエ今いいこと言ったよな。」
「何だ?」
「体拭いてもらえるわけだ、瑠璃花さんに。」
「う…。」
そうか、担当看護師は姉さんだ。
「それって、下半身もだよな。」
「…まあ、そうだろうな。」
「悔しい?」
「看護師としての業務を遂行するだけだ。」
「そうだな、業務として俺のアレを…。」
「やめろ。」
「摘まんで拭いて…。」
「やめろって。」
「羨ましい?」
「何でだよ。姉弟だぞ?腹は立つけど羨ましくはない。」
「腹は立つのか?」
俺は返事に窮した。姉さんは仕事をするだけ。今回はたまたまコイツの担当になったが、毎日毎日他の患者にしてきたことだ。何で俺は腹を立てているんだろう。
「帰る。」
「そうか。…なあ。」
「ん?」
「また…来てくれるよな。」
何だかんだ言ってもやっぱり心細くなってるんだ、コイツ。
「来るさ。姉さんがイタズラされないか見張らないとな。」
フ、と寂しそうに笑うテツヤに別れを告げ、病室を後にした。