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無色。
【その他 官能小説】

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無色。〜虹〜-1

「んあ…雨降ってきた。」
頬杖をつきながら外を見ていた一華は、そう呟いた。
「雨?」
崇史は雑誌から目を上げて一華と窓の方へ視線を移す。
「あれ…止んだね。」
一華は窓のさっしに手をかけ、窓を勢いよく開けた。
『部屋』という狭い空間から、開け放たれた広い世界に広がる。
気持ちよく吹く風が部屋に流れ込んだ。
「本当だ。お天気雨だったみたいだね。」
その風をもっと感じたくて、崇史は窓際まで足をすすめる。
「うん。あ、虹出てるよ。」
「ん?マジで?」
「ほら…」
細い指が空気をきる。指の先よりも、その指に魅せられた。
「…崇史、見てる?」
崇史の視線に気付いた一華は不思議そうに首を傾げる。
「え、あ…うん。虹ね!!」
崇史は慌てて虹に目を移した。
手を伸ばせば掴めそうな…そんな気がして、崇史は空に手をかざす。
と、クスクス笑い声が聞こえた。
「ふふッ虹、掴めるかもって?」
「…ッ」
急に恥ずかしくなって崇史は何も言えなかった。
「照れてるの?」
一華はふふッと目を細めて笑う。
「でもさ、掴めるかもって思うよね。」
一華も虹に向かって手を伸ばした。
「こう…すっとさ。」
そして、何かを握るような素振りを見せる。
「ねぇ崇史、もし虹が掴めたら…どんな感じかなぁ?」
一華は崇史の方に顔を向けた。強気な瞳が崇史を真っ直ぐ捕らえる。
「…え?」
一瞬。ほんの一瞬だけ、動けなくなる。何も考えられなくなってしまう。
見とれてたって言ったら馬鹿にされるから言わないでおこう。
「掴めたら…か」
「うん」
「…掴めない気がする…」
「もしもの話じゃ-ん。」
一華はちょっとむっとしたけれど、崇史は言葉を止めずに続けた。
「うん…まぁそうなんだけどさ。こう…掴もうとしたら、指の隙間からこぼれちゃう気がするんだ。砂みたいに…」
そう…それは一華みたいに。心の内を見せたと思ったら、俺の手からするッと逃げてしまう…。永遠の追いかけっこ。
「砂…」
一華は何か考えているようだ。
「砂とか…水みたいな感じじゃないかな?」
「ふ-ん…」
窓から吹き込む風が一華の髪を揺らす。顔にかかる髪を細い指でどかしながら言った。
「崇史みたい…」
「俺…?!」
「うん。こんな近くにいるのに、何考えてるか全然わかんない所らへんがさ。」
「その言葉そっくりそのままお前に返してやるよ…ι」
崇史は苦笑して、一華を小突いた。
「え〜!?何でさ!!」
一華は痛いッと頭を押さえながら、崇史に向けて蹴りを一発お見舞いする。
「うぉッ」
すねって痛いよね…。笑
「崇史…たまに崇史がわかんなくなる。いきなり真面目に話したりとかする時ね。」
「へ〜」
「捕まえようとしてもするッていなくなっちゃう感じ…するよ?」
一華は悲しそうに微笑む。
「…。」
誰でも相手の知らない一面を見ると、少し悲しくなる時があると思う。


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