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憑依("うつせみ"から改題)
【SF 官能小説】

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緊縛緊迫禁忌禁断-4

 「やめて…」
 ルナさんはそう言うのが精いっぱいだ。
 「…おい、本人の意思を無視してこんなことをするなんて、非道すぎるぞ。」
 「さんざん舐めまわしておいて今更何を言ってるんだ。」
 「俺じゃない!」
 「それに、黒ちゃん、出来上がってるよ。憑依してる俺には分かる。欲しがってるよ、キミを。」
 「だとしても!」
 俺の体がルナさんに体重をかけ始めた。
 「ダメよ…」
 先端がルナさんに入り込もうと蠢き始めた。
 「ダメだってば…」
 さらに体重をかけると、侵入させまいと抵抗していたルナさんの入り口が、防ぎきれずに口を開きそうになっていく。
 相手がルナさんなら、正直イヤではない。それにどうせ何も抵抗できないし。
 「いけない…こんなのは…」
 さらに体重がかかった。ついに入り口が開き始め、ジワジワと先端が潜り込もうとしている。
 ああ、入る。ルナさんに入ってしまう。でもいいや。大好きなんだから。
 「もう一押しで入るな。おい、やれ。」
 社長が俺に憑依している男に命じた。
 俺の体がいったん持ち上がり、一気に体重をルナさんにたたきつけようとした、その時。
 「ダメー!やめて、絶対にダメよ、だって…」
 俺の腰が降下を始めた。
 そうだ、行け。入れてしまおう。
 「止めて、止めてー!ダメよ、ダメ、兄さーーーん!」
 ピタ、っと俺の体が静止した。ルナさんの、つまり社長の右手が、俺の中の男を制止するように突き出されている。
 「あーあ、言っちゃうんだ、それ。」
 社長がため息交じりに呟いた。
 「に、兄さん?」
 「そ。黒ちゃんはキミのお姉さんではないって言ったよね?妹なんだよ、本当は。」
 「妹?だって、どう見ても年上だぞ?」
 「どう見えてるのよ。」
 「え、四つくらい上…」
 「四つ?」
 「三つ、かな。」
 「三つ。」
 「一つ、なのかなー。」
 「二つよ。ただし、誕生日の比較でだけど。」
 ワケ分からん。
 「憑依能力を発現する可能性を持った受精卵として誕生した順番で言うと、キミの方が四歳お兄さんなんだ。ただ、色々と事情があって温存しておいたんだ。で、その前にキミと両親を同じくするルナの受精卵が先に着床された、というわけなんだ。」
 「よく分からんが…要するに俺は妹と近親相姦させられようとしていたわけか。」
 「違うよ。させられようとしていたんじゃない。させられるんだ。というわけで、はい、再開。」
 俺の腰が再び持ち上がり、一気に突こうとした。
 「うううううむおおおおおおおお!」
 俺の体はガクガク震えた。
 「ほう、頑張るじゃないか。妹も優秀だが、キミも凄いな。」
 「んんんんんぁあああああああ…」
 窓が、壁が、床が天井が、俺の気合いに応えるように激しく振動し始めた。
 「おお…これほどのパワーを持っていたとは!しかし、そんな使い方をしていては、直ぐに電池切れを起こすぞ。」
 そんなことを考えている余裕はない。
 「はああああああああ!」
 パーーーーーン。
 俺に入っていた屈強な男が弾け飛んで壁に衝突し、グッタリ動かなくなった。
 「強制憑依排除だと?キミはいったい…」
 それを見ていた紫の娘娘が殴りかかってきた。華奢な体で。でも、俺には分かっていた。それがフェイントだと。
 「やー!」
 向かってきた彼女の胸を鷲掴みにした。
 「な、何するのよー!」
 「こうするんだ。ふんっ!」
 制服を引きちぎった。その中はほんとにノーブラだった。だが、俺の目的はそれを見ることではない。制服の切れ端と一緒に、彼女の中に入っていた男を引きずり出して投げ捨てた。男は壁で頭を強打し、娘娘は白目をむいて崩れ落ちた。
 「掴みだしたのか!他人に入っている憑依者を。なんという…だが、俺はそう簡単には排除出来ないぞ。」
 「だろうな。」
 俺はルナの眼を見た。ルナも真っすぐに見返してきた。そして。
 「なに!バカな…そんなことが。」
 俺はルナの中にいた。もちろん、社長も。
 「一人の中に二人が憑依だと?そんなことが…」
 「出来る。俺とルナの両方がそれを望んだ。だから今、俺はここに居る。」
 「…思い出したぞ、同時憑依だ。遠い昔、同じことをして見せた奴らが居た。でも、二人ともオリジナル7だった。」
 「そうか。だが、昔話してる余裕なんかあるのか?俺とお前は同じ舞台に立っている。覚悟しろ。」
 「ふん、憑依力が抜群だといっても、戦闘に関しては素人じゃないか。はあ!」
 鋭い掌底突きが飛んできた。俺はそれを難なくかわし、カウンターで腹に膝を入れてやった。
 「ぐふ…キミ、格闘技はやってないよな?」
 「ああ、そのテのものは何一つやってない。だって、怖いし痛いじゃないか。」
 「じゃあなぜ…。」
 「分からない。でも分かるんだ、戦い方が。」
 社長は間合いを取りながら考えを巡らせている。
 「…なるほどな。そういうことか。ならば。」
 「なんだよ。うっ…」
 何故だ、今度はかわせなかった。いや、それどころかヤツがいつ攻撃してきたのかさえ分からなかった。
 「ふはははは!それ、それ、それぇ!」
 「ぐ、があ…」
 俺は一方的にやられ始めた。
 「痛いか?すぐに黒ちゃんからたたき出してやるからな、それまでの辛抱だ。」
 『兄さん…』
 ルナか?心の中に声が響いてきた。
 『兄さんの戦い方は私から転写されたもの。だから、私にそれを教えた社長には読まれてしまう。』
 じゃあ、どうすれば…
 「何をボンヤリしている?覚悟を決めたのか。」
 このままでは、痛めつけられて放り出されるのを待つばかりじゃないか。そして今度こそルナと…。どうする。そうか!いや、しかし。


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