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憑依("うつせみ"から改題)
【SF 官能小説】

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赤いワンピースの女-1

 昨日は色々あったなあ。
 突然ミユキちゃんと、あ、隣の部屋の女の子の名前ね、ミユキちゃんとあんなことになって。
 慌てて自分の部屋に逃げ帰ったけど、話しましょう、と呼び出された。
 ヤバい話を覚悟した俺は緊張でクタクタに疲れた。
 でも最後には、また私に入って下さい、一緒に楽しみましょう、って約束出来た。ずっと狙ってた女の子だったから最高に嬉しかった。
 しかし、だ。
 分からない。彼女に入る方法が。特別に何かした覚えはないし、ミユキちゃんの話を聞く限り、俺が一方的に入ったとしか思っていないようだ。
 考えていても一向に答えが見えてこない。気分転換しよう。アパートの階段を織り、駐輪場に向かった。
 「ん?」
 見知らぬ女性が立っている。鮮やかな赤のワンピースにパンプス。服の上からでも隠しきれない見事なウェストライン。年齢はたぶん俺より少し上だろう。同学年の女の子たちではとうてい太刀打ち出来ないオンナの色香に溢れている。要するに、とってもステキなお姉さまだ。ただ…。
 頭に乗せているのは麦わら帽子などではなく、真っ黒のワークキャップだ。あり得ない組み合わせ。あり得ないのだが、なぜかこの人に限っては違和感がない。というより、それ以外の帽子が思いつかないぐらいマッチして見える。
 「こんにちは。そして、誕生日おめでとう。正確には昨日だけどね。」
 俺に話しかけてきた。抑制の効いた囁くような声は心をムズっとくすぐるが、キャップの下から覗く眼光の強さに、一瞬よろけそうになった。
 「あの…失礼ですけど、どこかで?」
 「初対面よ。よろしく。」
 「はあ。」
 わけが分からん。
 「誕生日、昨日じゃないんですけど。」
 とりあえず言ってみた。
 「その誕生日じゃないの。それにしても君、ヘタね。ヘッタクソね。」
 「なんですか、いきなり。僕のなにがヘタなんですか。」
 「簡単に感づかれてたじゃない、入ってること。まあ、感受性が強いあの子をわざわざ選んだんだけどね。」
 「選んだ?ミユキちゃん、あなたの仲間なんですか?」
 「仲間、ではないわ。敢えて言うなら協力してもらってる、って感じかな。」
 「協力?」
 「そう。あなたに誕生日を迎えてもらうために、隣の部屋に住んでもらったの。」
 「やっぱり仲間なんじゃ…」
 「あの子、なぜ自分があの部屋を選んで住んでいるのか、知らないの。」
 「そんなわけないでしょ、ちゃんと自分で探して選んで契約したはずですよ。」
 「っと思うでしょ。違うの。」
 「違うって…。」
 「じゃあ、あなたがあの部屋を選んだ理由は?」
 「そりゃあ、ちょうどいい場所で、家賃も条件通りで…」
 「他にも同様の物件は有ったでしょ?なぜここなの?」
 「何故って言われても。」
 その瞬間、フッ、っとおねえさんが消えた。
 「え?あれ?」
 あたりを見回したが、どこにも居ない。
 『君、気づいた?私が入ったの。』
 どこからか分からないが、はっきりと声が聞こえてきた。さっきのおねえさんだ。
 「もしかして…」
 『そう。私はいま君の中に居る。入ってくるぅ、なんて、叫ばせなかったでしょ?つまり、君に気づかせずに入った。』
 「そんなこと出来るんだ!っていうか、そもそも入り方が分からないんですけど。」
 消えたときと同様、いきなり目の前に現れた。
 「最初は誰でも入り方が分からないでしょう?経験を積むしかないのよ。大丈夫、おねえさんが優しく教えてあげるから。」
 「じゃ、あなたに入れて…じゃない、入っていいんですか?」
 「いいわよ、出来るものなら。」
 うーん、是非入りたい。そしてミユキちゃんの時みたいなあんなことになりたい。だってこんなにステキなおねえさんなんだから。でも、どうやったらいいんだろう。
 「思い出して。ミユキさんに入った瞬間を。」
 あの時ミユキちゃんの髪と俺の首筋が触れて、こんな子と一緒に居たいと思った。かなり強く。あ、もしかして。
 「手を握ってもいいですか?」
 「ええ、いいわよ。」
 おねえさんの手は透き通るように白くしっとり潤っていて、吸い付くように俺の手になじんできた。俺は願った。ああ、こんな素敵な人と一つになりたい、っと。
 視界がグニャリ、っと歪んだ。駐輪場の方を向いていたはずの俺の目には、後ろにあるはずの階段が見えている。
 「出来たじゃない!具体的に何も教えていないのに、すぐに私の中に入っちゃうなんて、想像以上よ。正直に言うわ。君、凄い。」
 『いやあ、それほどでも。』
 「じゃ、今度は出て。」
 出る?出るぅ!なんてふざけてる場合じゃない。この人に言われると、何だかその通りにしなければ気がする。自分の勘に従ってみよう。
 でも、どうやって出ればいいんだ。入るときは入りたいと願った。ならば、出たいと念じればいいのか?
 『出るぞ、俺は出る!出るんだ。何が何でも出るぞー!』
 …。
 『出ないんですけど。』
 「あら、しごきかたが足りないんじゃない?」
 『またそういうことを。』
 「ふふ、ごめん。ところで、あそこにあるバイク、あなたのよね?」
 俺のGSR400VTを指さしている。元々おやじがかあさんと出会った頃に買ったものだ。二人でよくこのバイクでデートしたらしい。俺が小学校に上がると、いろんな所へ連れて行ってくれた。家族の大切な思い出が詰まっている。でももう会えない。二人とも。
 「あ!」
 出た。


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